055■■ 建築構造設計家・木村俊彦
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木村俊彦氏の訃報が届いて早いもので一週間が過ぎた。
近親者だけの告別式が済むまで明かすなとの遺志で、ご逝去は先月だった。
故人は日本が誇れる世界に通じる構造設計者だった。

幾つもの思い出があるが、中でも印象に残るのは最初の打ち合わせで一通り話が済むと、計算を始められる時だ。
計算は暗算に近く、終わるとレポートを書き始められ、それが終わると構造概要書としてほぼ仕上がっていて、柱や梁の仮定断面がほぼ最終断面と同じ精度で示される。
それを見て何て頭の良い人だろうと、いつも感心するやら呆れるやらの凡人筆者だった。

最後にご一緒した仕事での構造設計者としての孤高の姿が目に焼き付いている。
竹中工務店技術研究所、この組織は高度な技術集団を自負して自社マニュアルに適合しないと登場して来る。
それは故人の考えと真っ向対立するものだったが、最後まで自分の考えを貫かれた。
だが、深夜深く掘削を終えた地下で土をじっと見詰める故人があった。筆者はその背中を黙っていつまでも見ていた。

故人は挑戦者であり創造者だった。
だが、それは常に新たな挑戦の中で切り開いて来られたのだと、その背中を見ながら思った。
偉大な構造家のご冥福を祈って、合掌...。


136■■ 木村俊彦氏を偲ぶ
by finches | 2009-06-10 08:13 | 記憶


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