幸田露伴の「水の東京」によると、かつてこの白鬚橋が架かる辺りには橋場の渡しがあり、在原業平が都鳥の歌を詠んだのも此地の辺りだと書かれている。 名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと 一説によると、業平が東国を旅した時に、隅田川の舟から見えた鳥の名を聞いたところ、船頭はその名を都鳥だと答えた。その都という言葉に京のことが想い出されて、この歌を詠んだそうだ。 墨田区に残る地名で、業平(なりひら)という呼び名を変わっているなと思っていたし、言問(こととい)もその語源が動詞であることが不思議だったが、これらの地名や、業平橋、言問橋などの橋名が、この歌に由来していることを知り、やっと得心がいった気がする。 (余談:今までは何で‘言問団子’なんだと思っていたが、その謂れが分かってくると何だか無性にこの団子も食べてみたくなるから不思議だ) さて、白鬚橋は昭和6年(1931)に架けされた橋で、その形式はブレースドバランスドタイドアーチとトラス桁の併用橋となる。 隅田川が大きく蛇行している為にその両雄を同時に眺めることはできないが、前回取り上げた千住大橋とこの白鬚橋は大変よく似ている。後者は中央部のアーチが両径間のトラス桁に流れるように連続している為に違った印象を抱くが、この2橋は同じ設計者によって同じ思想でデザインされたものに間違いないだろう。 そしてその背景に、千住大橋の成り立ちや橋場の渡しのこと、芭蕉の旅立ちや業平を東国への旅へ向かわせた心境、等々に思いを馳せて設計されたかも知れないと想像すると、その趣もまた倍加する気がする...。
by finches
| 2009-10-01 07:02
| 復興
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