159■■ かたちの美学
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[碍子(がいし)]
(insulator)電線を絶縁し支持するために鉄塔や電柱などに取り付ける装置。一般には磁器またはプラスチック製の絶縁体と鋳鉄製の金具より成る。(広辞苑)

昔から磁器の碍子に興味があった。
子供の頃は毎年夏休みになると、父母の田舎の家に行ったものだが、その古い家の天井や柱をこの白い磁器の碍子を伝って黒い網布のようなもので被覆された電線が幾筋も走っていた。
電線は二列一組で走っていて、この二列がつくる美しさが幼い頃の心象風景の中にある。

碍子と電線の関係は実にシンプルだ。
何故シンプルかと言うと、碍子は「点」に準(なぞら)えられ、電線は「線」に準えることができる。
「線」は直線であり、直線は緩みなく張っていなければならず、また直線はその向きを変えようとする時、起点となる「点」を必要とする、ここに自ずとある緊張関係が生まれる。
このまったく無駄を排した点と線がつくり出す幾何学は一つの美の領域にまで達していると思う。

写真にあるように、この関係は屋外に於いても同じで、一つ一つの碍子によってあるものは中継され、またあるものは向きを変える。
写真はヤコブセンが設計した美しい集合住宅・ベラヴィスタが建つ海辺の電柱だ。
日本では電柱での架線実技の競技があるが、速さや正確さを競うだけでなく、その美しさを競う競技があってもいいのではないだろうか。
そうすれば、日本の電柱も少しはましになるかも...。

by finches | 2009-10-03 06:48 | 嗜好


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