踏切は鉄道の線路を道が横切る所につくられる。 だが、現在の特に交通量の多い大きな道路になると、道を鉄道の線路が横切る所に踏切があるように見えてくる。 かつては踏切の警鐘が鳴り出すと車や人は止まり、そこを列車が警笛を鳴らしながら悠然と通過したものだが、現在は踏切で列車の方が先ず止まり、車や人が止まったことを確認した上で、おもむろに警笛を鳴らしゆっくりと走り出す光景を見かける。 市電などでそんな光景に出会(くわ)すと、なんだか微笑ましく郷愁すら感じる今日この頃となってしまった。 写真は越中島線の葛西橋通の踏切だが、単線の貨物線が南に向かって一直線に伸びている。 電化されていないこの線路の上を、ディーゼル機関車に引かれた貨車が通過する姿を一度見てみたいと思った。 かつて当たり前のように存在した光景、それがこの時代の中にあるとどこか産業遺産のように見えてきて、心(うら)寂しい郷愁すら感じるのは何故だろうか。 そこにあるのは、人々の日常から遠く懸け離れた存在となった世界と、現実の索漠とし殺伐たる日常がつくり出す空虚な世界との接点であり、そこに幻影のように輝く郷愁の美しさがあるように思えてくる。 後何年かすると、ここから線路が取り外され、荒廃し荒涼としたただ細長い跡地だけが、北と南の地平線の向うに消え行く日が訪れるのだろうと思った...。
by finches
| 2009-11-03 06:45
| 時間
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