もう二十年くらい前になるだろうか、ふと思い描いたアイデアに思いを巡らし、一人悦に入って、真面目にその可能性を考えたことがある。 新幹線には駅弁とビール、そして新聞や雑誌や時には文庫本を買って乗る。そして降りる時、駅弁とビールは腹の中に納まっているが、新聞や雑誌は迷うことなくゴミ箱にポン、読みかけの文庫は持ち帰ることが多いが、だた車中の暇つぶしに選んだ文庫にはそれ程の愛着はなく、ただ何となく捨て難く持ち帰ることになる。 そこで考えたのがホームのkioskで本が借りられたら、そして降りる駅のkioskにそれを返すことができたら、と大真面目に考えた。 だけど、問題もある、返さない輩が必ずいるだろうし、それはどうするか。 それには借りる時にワンコイン500円を預け、返す時に返金する、「これでうまくいく!」、と筆者の単純な頭は一気に結論に到達した。 このことを誰かに大真面目に話したところまでは覚えているが、それっきりスッカリ忘れていた。 今年の六月に根津にある‘ギャラリー・やぶさいそうすけ’を訪ねた時に、この‘根津メトロ文庫’が目に留まった。 「アッ、本当にやった人がいたんだ!」とおもわず思った。 その地下鉄の電車の形をした中には本が並べられ、借りる人返す人を待っているかのようだった。 現在、この根津を含めて幾つかのメトロの駅でこの善意の試みは続けられているが、その数以上に取りやめた駅も多いようで、それはひとえに利用者のマナーの悪さが原因のようだ。 筆者が考えたものと似ているようだが、比べてみると随分と違う。筆者のアイデアはこうだった。 kioskを利用したリサイクルであること。 長距離列車の利用客を対象にすることで、例え読みかけでも自宅に持ち帰らず下車駅での返却を前提とすること。 保証金を取ること。(1000円くらい取ってもいい) 人の善意を人の悪意が踏みにじる。 この‘根津メトロ文庫’がこれからも続いて欲しいと思う、例え本を借りなくてもその本を目にする人に、この文庫を守る人々の善意の香りは届くだろうから...。
by finches
| 2009-11-22 06:45
| 無題
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