212■■ 勝鬨橋有情
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前稿の地下発電所を見ての帰り、晴海運河に架かる長い橋の上で真っ赤な夕日を見た。
そして朝潮運河の河畔を歩く頃には、もうあたりは夜のとばりに包まれていた。
冬だというのに心地よい川面の風が頬を撫でる中、対岸の月島川に映る灯りはゆらゆらと、それはうっとりするくらい美しかった。
そして月島に向けて朝潮運河を渡る橋の上からの川は、黒く輝く妖艶な帯のように黒い海へと続いていた。

そんな夜の景色を確かめたくて、小春日和の日を待ってその時とは逆に月島から南に向かって昼下がりの街を歩いた。
そして随分この街への印象も変わった。街は川と共存することでこれ程豊かになるものなのか、何でもないような日常の中、その存在すら忘れている橋や川、だがそこを渡る時に人々はきっと多くのエネルギーを受け取っていると思った。

その姿は見えないが、歩きながらも常に隅田川を感じた。隅田川と繋がっていることで潮の満ち引きは規則正しくどの川にも脈動を送り、汚れていても銀鱗はキラキラと輝き、釣り糸を垂れる人、それを見る人、それを横目に通り過ぎる人、言葉を交わさずともこの時間と空間の共有こそ、川が人と街にくれる生気だと感じた。

隅田川に出て勝鬨橋に向かって歩いた。
何度訪れても橋も川もその表情が異なる。この日も銀色に輝くタイドアーチの前を行き交う人の影と、タイドアーチに落ちる自身の陰が、これから次第にその長さを増すことを伝えていた。
この日は勝鬨橋を渡り築地を抜け銀座まで歩いて帰途についた...。

by finches | 2009-11-27 06:57 | 時間


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