230■■ 炭火と干物
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拙稿、蕪と馬鈴薯につづく七輪編を箸休めに使うことにした。
干物は既に焼き上がる寸前で七輪の中では備長炭がめらめらとゆっくり燃えて最後の仕上げに忙しい。
自分が作った干物を炭火で焼く、焼き上がる頃合を見計らって白いご飯と味噌汁が食卓に並べられ、阿吽の呼吸で焼き上がった干物の皿をそこに置く。
そして、粗にして豊かな和の朝餉をゆっくりと堪能する。

炭は普通の黒炭と備長炭を用意してあるが、大抵は火持ちが良く燃える様が美しい備長炭の方を使うことが多い。
今は然程苦労せずに手に入れることができる備長炭も、15年くらい前は車で走り回って古くからの燃料屋を探したものだ。
備長炭をお風呂に入れたり、冷蔵庫の水の中に入れたりした時期もあった。そう言えば、まだ車のシートの下には消臭用の備長炭が何本か袋に入れて置いてある。

干物は塩と太陽と風が作る芸術品だと思う。
新鮮な魚を選び、それを手早く捌き、塩をするまでは自分の出番だが、それを干して水分を飛ばし程よい味にするのは自然の力を借りる以外に方法はない。
いざ干そうとしたら天気が悪くなったり、湿度のある曇天などはもうどうしようもなく、そうなったらもう諦めるしかない。
そうかと言って日差しが強いだけではこれまた駄目で、風の役割が干物の出来の良し悪しを決定する。
だが、全ての条件が整っていても人間がそれらの変化を見ながら、竹笊の上に綺麗に並べられた魚の位置を変えたり、ひっくり返してやらなければ良い干物にはならない。

そして、その干物を最上の味に仕上げてくれるのが炭火だ。
この炭火で焼いた干物の美味さに勝るものはない...。

by finches | 2009-12-15 07:08 | 嗜好


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