橋というものの存在が記憶の中に焼き付けられた二つ目がこの新川鉄橋です。 子どもの頃の記憶ではこの橋は緑色をしていて、この川に何本も架かっていたはずの橋の中でこの鉄橋だけが強く印象に残っています。 それはこの鉄橋の上流右岸に国立大学病院があり、当時はこの鉄橋を過ぎて少し行くと木造平屋建の病棟が何棟も川沿いの道の向こうに並んでいて、病院入口までこの病棟を左に見ながら進まなければなりませんでした。 子ども心にこの鉄橋を過ぎると木造病棟があって、そこからは患者の呻き声が聞こえて来る、それらが一体となり緑の鉄橋の印象として焼き付いています。 だから、バスを降りてこの大学病院に向かう川沿いの道は、どこか怖いというか可哀相だという記憶を伴っています。 ところで、この鉄橋の線路は当時と変わらない単線で、写真の左に進むと駅があり、その手前には建築家・村野藤吾の手となる市民館(音楽ホール)があります。恐らく、記憶の中でこの鉄橋とこの市民館は一つに繋がった存在だったと思います。 鉄橋を過ぎて木造病棟まで歩く道すがらこの市民館が前に広がる大きな広場越しに見え、その建築の中にある奇妙な円柱の記憶と一緒になって不思議な世界を頭の中に思い巡らしながら歩いていたのだと思います。 この川は満潮になると海水が上ってきて水を湛えますが、干潮になるとこの写真のように川底に下りて歩くことができます。 でも、この橋をこんな風に見たのはこれが初めてのことでした。 少し潮の香が漂う川底を歩きながら、この川とそこに架かる橋の歴史に思いを馳せた一時でした...。
by finches
| 2010-01-09 07:46
| 時間
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