290■■ 復興小学校・明石 其六
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現在この明石小学校は差し迫った建て替え問題に対して父兄や住民たちを中心とする保存運動が起きていて、筆者も微力ながらその運動の後方支援になればと、この学校が建っている明石周辺の歴史的な背景やこの学校が誕生した時代の背景、そしてこの学校が持っている建築的な特長と魅力などを分かり易く書いている。
しかし、今ここで書いていることはこの保存運動が起きて俄に調べ上げたことではなく、この学校が持つ他の復興小学校とは違う特徴が一体何に起因しているのかという疑問と興味から収集した資料の中から、そのテーマに応じて選び出して書いているに過ぎない。
そして、その疑問と興味を抱くきっかけとなったのが、この建物のデザインを徹頭徹尾支配している曲線と曲面の存在だった。

さて、復興小学校・明石の最後はこの小学校の外観を最も特徴付けているパラペットの図面を取り上げてみた。
明石小学校の特徴は何と言っても曲線と曲面を多用していることだが、筆者が知る限りに於いて建物全周とその断面に至るまでここまで徹底的に曲線と曲面が使われている例はこの明石だけだと思う。

かつて鉄筋コンクリート造建築の出現は、それまでの石造建築に対して構造的には重力から開放され、それによって窓が自由に開けられるようになり、瓦や金属葺きの屋根を置くことから開放され、それによって屋上と呼ばれるフラットな床を手に入れることになる。
このフラットの床を実現するためにはその下に防水をする必要が生まれ、その防水の端部を納めるために屋上から手摺のように立ち上がったパラペットが生まれた。
このパラペットはその建築のスカイラインを決定付ける重要な建築的要素として、様々なデザインとそれを支えるディテールが考え出されていった。

明石小学校の場合、パラペットを曲面にした上にそれを外壁から大きくオーバーハングさせているのが特徴で、そのパラペットを支える為に屋上に飛び出した腕木(この場合は逆ハンチと言った方が正しいかも知れない)が図面には描かれている。
屋上に整然と並ぶこの腕木の列を初めて見た時、筆者はあの復興事業の中でここまで情熱を燃やして設計に当った人間がいたのかと、驚き胸に熱いものが込み上げてきたのを覚えている。
そして、最後まで決して力を緩めることがなかった設計者・原田俊之助の誠実な一面を見たような気がした...。


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[注記]
復興小学校・明石 其一~其六をessay bibliophobia annexに纏めました。
 ◆ 明石小学校・設計圖



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by finches | 2010-02-26 06:59 | 復興


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