生粋の江戸っ子の友人が両国に住んでいる。 そのせいで両国橋は学生時代から馴染みが深い橋だ。 朝早くまた夜遅くに車でこの橋を走ったり、酔った帰り隅田川の風にあたりながらこの橋を渡った思い出がある。 当時ウォーターフロントという言葉が盛んに言われていて、都市や暮らしと水辺との係わりが見直され川との共存に向けての取り組みが全国で始まっていた。 今でこそ隅田川にはテラスが整備され水辺に下りて川沿いに歩くことができるが、当時は川全体が高い堤防に覆われていて、橋を渡る時以外はその流れを見ることもできないくらい遮断された存在だった。 その隅田川にパリを流れるセーヌ川を手本にテラスが造られ、やがて同じくセーヌ川を手本に水上バスが行き交うようになった。 どこかに出かける時友人は家の車を持ち出した。 友人が持ち出すその車はボルボのAMAZONという1960年代に作られた当時としても古いもので、この車には様々な思い出がある中、両国橋を渡る時の印象が最も記憶に残っている。 それはパッと視界がひらけた瞬間「あっ、両国橋だ」と感じ、低い欄干やモダンな外灯を窓の外に慌てて追ったものだ。 その中でも夜の親柱灯具の灯りは不思議な存在で、この球形オブジェに仕込まれた灯りが車窓からは地球儀のように見えて、また長らくそう思い込んでもいた。 球である為に繋がっているように錯覚するが、この灯りは二つに切れていて一方は歩道をもう一方は橋詰の階段を向いている。 地球儀に見えた灯りもそんな役目をデザインに秘めていた。 時を経ても両国橋の丸い親柱のデザインと、ボルボ・AMAZONの丸い印象が記憶の中で重なっている...。
by finches
| 2010-03-09 07:43
| 復興
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