367■■ 隅田川 勝鬨橋

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赤、青、黄、橙、白、紺、灰、灰緑、空、黄緑、濃茶、濃緑、濃青、濃紺、これらは筆者が見てきた震災復興橋梁の色だ。
そんなカラフルな橋の中で震災復興橋梁ではないが銀色に塗られた橋が二つあり、その橋はそれぞれが個性に溢れ何度訪れても飽きることがない。

勝鬨橋もそんな銀色に塗られた橋の一つで、隅田川の最も南に位置するこの橋は辺りに遮るものもなく南西を向いていることで、季節を通してまた一日を通して太陽の光で刻々とその表情を変える。
これがもし上のようなカラフルな色に塗られていたらその味わいも随分違っていただろうが、白色でも灰色でもなく銀色というのが味噌で、この渋い銀色のキャンバスに太陽の光は様々な演出を加える。

そんな中でも太陽が段々と西に傾き次第に光の色も黄色味を増し、蔭がどんどんとその長さを増してくるあたりからこの橋が最も美しい時間を迎える。
そして、空が茜色に染まると橋もその色と一つになり、その美しさは正に絶頂に達する。
それもこれもこの橋が銀色であることでその効果も最大限に引き出されることとなる。

写真はその光の演出が始まったあたりで、アーチリブは太陽の少しづつ黄色味に変わろうとする光を一面に受けて燦然と輝き、上弦トラスは気付かれることもなく長い影を伸ばし、無数に打ち込まれたリベットは光と翳が一体となった無数の点に変わり、行き交う人もピッタリと焦点があったようにくっきりと浮かび上がる。

勝鬨橋が架けられて70年になる。
昔にあって今に無いものばかりの今の世に、ここだけは今に無い昔の逸品が凛としてある。
そして、そこには昔と変わらぬ太陽の光が溢れている...。

by finches | 2010-05-14 06:11 | 時間


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