今は埋め立てられているが、かつての楓川は西は京橋川と桜川に、東は日本橋川に繋がる正に東京の中心を東西に流れる川だった。 筆者はこの川を「かえでがわ」と呼んでいるが、実際は「もみじがわ」と言うのが正しい呼び名のようで、その名の由来は江戸城の紅葉山(もみじやま)にその源を発していたことによると何かで読んだことがある。 ならば紅葉川とすればいいようなものだが、筆者の独断と偏見でこれに解釈を加えるならば、同様に木の名から取った「桜」に呼応させて「楓」と一字で表したいと考えた粋な人間がきっといたのだろうと想像している。 綺麗な名を冠した二つの川(桜川と楓川)も今は共に埋め立てられ無残な状態で悲しくなるが、楓川は埋められた上に高速道路で空まで塞がれ、そこに架かる千代田橋は橋脚だけを埋められた正に半埋めの状態で当時の姿を今に残している。 この橋は震災復興事業で幹線道路として整備された永代通りに架けられた主要な橋で、勿論この橋を東に行くと「帝都の門」と言われた永代橋へと続く。 最初この橋を陽の当らない高架下に見た時、その当時のままの親柱や袖柱や袖高欄をなんとも気の毒に思ったものだが、若しやと思い横に回ってみると進入防止のネットで遮断された先に中央部の鋼桁が表れ、その力強さと美しさに目を奪われたものだ。 竣工間もないと思われるこの橋を着物姿の日傘をさした婦人が渡っている写真がある。 そこには今と同じ親柱が空に向かって大きく伸び、その先に広がる空は遮るものひとつなく、どこまでもどこまでも続いていた...。
by finches
| 2010-05-15 05:10
| 復興
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