430■■ 大暑の汗

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その町の名は昔から知っていた。
だが、最近は味噌を取り寄せている家人の口から頓にその町の名を聞くことが多くなった。
筆者がその町を訪ねているのはそこにある製材所が目当てだ。
そして、そこを訪ねるのも昨日で4度目となった。

3度目は梅雨の大雨の時で、雨の中の急な訪問に驚かせ仕事の手を止めさせたが、僅か15分足らず会話を交わした後、土砂崩れで通行止めになっている道路を避けて帰路についた。
その途中和紙を作っている場所へも向かったが、余りの雨に細い山道に危険を感じ途中で引き返した同じ道を、昨日は再びその場所へと向かった。
求めている色と風合いと厚さの和紙に出合えれば、是非使ってみたいとの思いに期待も膨らんだ。

昨日は大暑、その町も腕時計の温度計は37度を示していて、少しの時間町の旧道を散策しても汗が噴き出し、製材所で立ち話をしていても球の汗が容赦なく噴き出した。
ふとこれまで無造作に積まれていた何本もの大木が少なくなっていることに気付き、きっと製材されたのだろうなと思っていると、正にその大木が製材されている最中に出合いその様子を飽きもせずに眺めた。
木理を読みながらの手際のいい作業、大木を自在に操りながら台車ごと滑るように切断していく。

もう一つ思いがけない収穫があった。
行きがけに立ち寄った別の製材所で栗の乾燥材がないか駄目元で尋ねてみた。
前回訪ねた時はもう一杯やっている「おじいちゃん」だったが、昨日は「矍鑠たる老人」で颯爽と栗の木の場所へと案内してくれた。
これが栗、これは欅、これは桜、これは朴、生き生きと手際よく説明してくれた。
お蔭で栗を入手する算段もついた。

抜けるような青い空には入道雲が聳え、山の緑はどこまでも鮮やかに空の青と混じることなく続いていた...。

by finches | 2010-07-24 07:32 | 時間


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