白い漆喰の壁に開けられた小窓、その障子と板戸と枠が妙に美しく感じられた。 前日から幾つもの木造の窓を見ていて、何度も成る程と思うことがあった。 それはそれらの古いものと現在のものを頭の中で比べながら、これでいいんだ、これで問題ないんだ、という得心の成る程だった。 窓には枠が存在するが、枠は上下左右四本の材料で構成され、その四本をどう納めるかで様々に変化する。 一般的には縦勝ちと呼ばれる左右が上下の材料に勝つ納まりが多いが、左右と上下材がその角を折半する留めと呼ばれる納まりも良く見られる。 しかし、これらはその仕口が必要としている納まりから選択されたものと言うより、伝統的に固定化したものや、好みによって決められることが多い。 ところが、この小窓の枠は水に弱い木の弱点を補おうとする意思がこの仕口の構成を決定付けている。 壁を伝う水を切るために上枠は左右の縦枠に勝ち、更に横に伸ばされている。 その縦枠は下枠に勝ち、更に下に伸ばされている。 この納まりによって最も水に弱い木口に水が溜まらないディテールが完成している。 木というものは水分を含んだ状態に置かれると腐るが、濡れても乾燥するように考えられたものは百年以上雨風に耐えることが目の前で実証されている。 そのことに何度も成る程と思った訳だ。 この全く無駄のない引くこともなければ足す必要もない、そこに均斉が生まれそれを美しいと感じるのが日本人の優れた感性と言えるだろう。 そして、そんな板戸に名残のサスルベリの花が色を添えていたのが、また美しかった...。
by finches
| 2010-10-20 06:04
| 空間
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