524■■ 収穫-十一月
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一軒目に訪ねた画材専門店に漆刷毛は置かれていなかった。
二軒目に訪ねた塗装専門店にもその刷毛はなかった。
三軒目もなかった。
四軒目もきっとないだろうと思いながら車に戻る途中、たわわに実をつけた二本の柿の木が目に留まった。

そのたわわに実った柿を二人の老婆が昔ながらの先を割った長竹を使って楽しそうに収穫に励んでいた。
話しかけようと二人に近付く筆者に長竹の先からもぎ取った枝を外す役目の老婆が気付き、採ったばかりの柿の枝を持って筆者に近付いて来て、さも当たり前のように三個の実を付けたその枝を塀越しに手渡された。
これには些か驚いたが、ただ在り来りの礼を返すしか言葉が見当たらないくらいのそれは早業だった。

そして筆者が近付いた目的を果たすべく二人に声を掛けた。
「随分と実が多いけど、鳥たちには食べられなかったんですか?」と。
これだけの実を付けた柿の木を鳥たちが放っておく筈はなく、やはり鳥たちには食べられたそうだが、それでもこれだけ多くの実の数を保っているということは随分と豊作の柿の木だと思った。

その木の柿の実は筆者が宿敵ヒヨドリと戦っている柿の実より若干小振りだが、綺麗に丸く柿の木全体が今まさに食べ頃と言わんばかりの柿色に色付き光り輝いて見えた。
二人の老婆はきっと長竹が届く所までの柿を採ったら今年の収穫を終えるのだろう。
そしてそこに残された実には再び鳥たちがやって来て、楽しそうに食べるのだろう。
しかし鳥たちもみんな食べることはしないでいくつかの柿を枝に残しておくことだろう。
鳥たちもきっと木守柿のことを知っているのだろう...。

by finches | 2010-11-19 05:21 | 無題


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