534■■ 吊るし飾り
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この飾りの風習は元々この町にあったものではなく、ここ十年とまだその歴史は浅い。
だが、明治17年に建設された住宅の中に吊るされていると、江戸時代に端を発するその飾りが何とも自然に思われた。
このような吊るし飾りの風習は柳川のさげもん、伊豆の雛のつるし飾り、酒田の傘福などとして伝わっているようで、江戸時代の奥女中の嗜みごとが彼女らの里帰りを通して庶民にも伝えられたものだと知った。

初めてこの旧廻船業者の住宅を訪れた時からこの吊るし飾りには強烈な個性を感じていて、恐らく江戸時代からこの町に続く風習だろうと勝手な想像を巡らしていた。
だがこの度その歴史の浅さを知って些か驚いたが、継承されてきた手本とする伝統を真摯に正統に受け継いだものは、その歴史に関係なく本物としての光彩を放っているように感じられた。

裕福な家は雛壇を更に豪華に引き立てるために部屋中にこの飾りが吊るされ、雛壇を用意できない家では端切れを縫い合わせて心を込めて作られたそうだ。
そして、前者はいくつもの行灯に照らされたきらびやかなもので、後者は魚油の灯りに照らされた粗末なものであったかも知れないが、共に変わることなく輝いていたことだろう...。

by finches | 2010-11-29 06:17 | 無題


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