煉瓦壁の先を左右に走る通りがかつてのメインストリート、そしてその通りを横切り上に向かって伸びている細い道は露地と呼ばれる。 この露地には反対側に伸びるもう一方の景色があって、そちらは煉瓦壁の先で直角に曲がりかつての海岸に向かって伸びている。 白壁と海鼠壁が作り出すひとつの秩序ある空間の中にあって、一枚の煉瓦壁の存在はその秩序と調和を乱すようにも見え、またその秩序を崩すことで新たな創造を生み出しているようにも見える。 同じ煉瓦壁でもそれが防火塀として設けられたものであればその表情は変わるし、建物の外壁であればそれ以上にその表情は変わってくる。 取り分けそれが中華建築であったりすると、その細部の装飾を伴う独特の様式を以って辺りの雰囲気までをも一変させる。 この白壁と煉瓦壁を見ていて日本の木造建築に使われる木材のことを思った。 例えば寺院などを見ても幾種類もの木材が使われているが、そのことに気付くことも意識することも先ずはないだろう。 茶室などはその最たるものだが、和室一つをとっても、またその中の床の間辺りだけを見ても幾種類もの木材が使われていたりする。 寺院での木材の使い分けは別としてもこれら木材の種類を多用することで、単一の材料で構成する色味や風合の単調さを嫌いそれを崩し、そこに新たな均衡と調和を創り出してきたのだと思う。 ある秩序に支配されている中にあっても白壁に見られる様々な造形と遊び、そしてそれらとまるで異質にさえ思える煉瓦壁の存在が不思議と同化して見え、心地よい露地空間を生み出していると感じた...。
by finches
| 2010-12-03 04:24
| 空間
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