622■■ 折れた色鉛筆
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書棚の本は書棚から落ちただけ。
机の上のものは机から落ちただけ。
物入れの中のものは棚から落ちただけ。
床に置いてあったものはそこに倒れただけ。
壁に立て掛けてあったものは床に倒れただけ。
机や重い書棚も動いただけ。
壊れたものは立て掛けてあった模型だけ。
折れたものは色鉛筆だけ。

たったこれだけのことの片付けを昨日も続けた。
そして、今日も続ける。
片付けながらラジオを聞いている。
安否を気遣う伝言、無事を伝える伝言が流れている。
聞きながら一方では余震のこと、罹災地のこと、原発事故のことを考えている。
ふと気付くと虚空を見詰め、片付けの手が止まっている。

官邸対策室のこと、原子力保安院のこと、東京電力のこと、東芝原子力事業部のことも考える。
保安院と東電のことは何度も頭を巡り、その発表会見から見える体質が頭から離れない。
また、会見に望んだ人間を通してその後ろに隠れている、安全な場所に身を置く人間のことを考える。
それらの人間と暗闇の中で被曝の恐怖と闘いながら決死の作業を続ける何百人もの人のことが重なってくる。
そして、事故現場に行くこともない原子力保安院と東電のことを再び考える。

ここは電気も点くし、水も出る。
情報もあるし、電話も通じる。
食べ物もあるし、暖房もある。
そんな安全な場所で考えている。
最後にそんな自分のことを考える...。

by finches | 2011-03-16 03:16 | 無題


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