630■■ 極早稲玉葱の味
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東北関東大震災が起きた後、西の方に住む友人が心配して連絡をくれた。
その数は一府二県から五人に及んだ。
東京にいても太平洋沿岸の津波被害が連日報道される中、仙台をはじめ内陸部の地震被害の状況はなかなか摑めず、具体的な被害の状況を知ったのは随分と後になってからだった。
況して地方から報道を見ていると、東京での様子などは直接その状況を聞かない限り、その時の地震の程度や被害の状況などを知る術は皆無と言っても過言ではないだろう。
だから、あんな恐怖は初めてでもう駄目かと思ったとか、本棚の本が全て落ちたとか、倒れそうな本棚や机から滑り落ちそうな物などを必死に押さえたとか、あらゆる物が散乱して足の踏み場もなかったとか、そんな様子を話して初めて東京での状況が伝わった。

連絡をくれた多くは、何か送るものはないかと聞いてくれた。
何人かはどうやら既に東京にトイレットペーパーなどを送った様子で、それらが窮乏して困っていると思ってのことだった。
東京のスーパーでミネラルウォーターが売り切れという報道がされると、水は大丈夫か、困っていないか、送ろうか、と聞いてくれた。
こちらから地方の様子を逆に聞いてみると物流連鎖に因るのだろう、地方でもミネラルウォーターが潤沢にあるわけではなさそうだった。

毎年五月の中旬になると早稲の玉葱を送ったからと、送った後で電話があった。
だが今年の電話はその時期よりも早くそして送る前にあり、水など他に困っているものはないかと尋ねられた。
普段はミネラルウォーターを買って使っているが、こんな状況の中でそれが手に入らなければ水道の水で事足りると思っている。
だから別に大丈夫ご心配なくと答えたのだが、届いたいつもの年よりやや大き目の箱を開けるとミネラルウォーターが入れられていた。
極早稲の玉葱、ピチピチのサツマイモ、キュッと締まったキャベツ、旬のイカナゴのくぎ煮、そして2本のミネラルウォーター、何ともありがたくその心遣いに心から感謝した。

いつもより早いそれも極早稲の玉葱を見ながら、これは玉葱を送ることを口実に水を送ろうとした心遣いではないかと考えた。
そして何とも奥ゆかしくシャイな夫婦の笑顔を想像した。
一昨日の夕食から早速その玉葱を堪能しているが、極早稲の玉葱は足も速い。
怖い目にあった東京の友人たちにも、この早春の甘い味のする極早稲玉葱を早くお裾分けしてあげよう...。

by finches | 2011-03-30 05:46 | 無題


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