634■■ 津波想定高さ 03 -津波災害は繰り返す
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1990年に箕浦東北大教授らによる仙台平野での津波堆積物の発見から貞観津波(869年)の存在が地質学的に実証されました。
もともとこの地域は多賀城跡の考古学的発掘調査が長年にわたって行われてきた関係で、その地層に含まれる砂層の存在はそれより前から分かっていたものと推測します。
箕浦教授らはその砂層と泥炭層がつくる地層をジオスライサーによる掘削と、その成分の放射性炭素による年代測定をすることで、その最上部にある砂層が貞観津波によるものであることを解明し、同時にその下に先史時代の巨大津波の跡を示す二つの砂層を発見しました。

この時に発見された最下層の砂層は今から3000年前のもので、869年の貞観津波までの間には800年から1100年の周期で貞観津波に匹敵する巨大津波が仙台平野を襲っていたことが新たに分りました。
その後も更に箕浦教授の研究は進み、『貞観津波と低剛性地殻破壊による巨大地震津波再来周期(2001~2002年)』と、『貞観津波による津波被害の定量的評価(2005~2007年)』という二つの論文を発表されました。
前稿で紹介した箕浦教授の『津波災害は繰り返す』は上の前者の方の論文の一部を東北大学広報誌 『まなびの杜 No.16 (2001年)』に掲載するために書き直されたもので、内容は原文と同じと思われます。

[筆者注記]「思われます」と書いた理由は、前者の論文のオリジナルの入手はできませんでしたが、論文の概要説明の内容からと、後者の論文に全く同じ下りがあることから、論考の趣旨に沿うことから前者論文に執筆されたものと推測し、その内容を広報誌に発表されたものと判断しました。[おわり]

ここで長々と箕浦教授の論文についてその発表経緯を説明しているのは、貞観津波の堆積物を発見した1990年の時点では貞観津波による浸水範囲と津波の遡上高さはまだ解明されていませんでしたが、2001年の時点では巨大津波が仙台平野に押し寄せ、それが繰り返される周期が指摘されていたことを時系列で知ってもらいたかったからです。
言い換えれば、今から十年前には近々必ず起こる巨大津波の予想が箕浦教授の研究で明らかにされ、それは全ての専門家、研究者、東北大学学友、報道関係、そして原子力安全委員会、原子力安全・保安院、経済産業省、自治体、政府、東京電力、東芝、土木学会、原子力学会、それら全てがこの研究成果を共有することが出来ていたということです。

さて、箕浦教授の指摘を受けてか否かは分りませんが、複数の組織が協力してこの貞観津波の解析が更に進められました。
それは平安時代に起きた貞観津波という巨大津波をただ研究することが目的ではなく、近々起こる大地震とそれによる津波の高さと浸水範囲を予測し、防災に役立てようとする国家プロジェクトであったと推測します。

そろそろ1200字です。
今回は2001年に津波災害は繰り返すという指摘が一人の研究者からなされ、それを全ての関係者が知り得ていたこと、またその研究を更に発展させる津波の解析も行われていたこと、それらを頭に入れてください。
by finches | 2011-04-03 05:11 | 無題


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