638■■ 津波想定高さ 07 -東北電力の場合
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女川原子力発電所における津波に対する安全評価と防災対策





東北地方沿岸に或る周期性をもって襲来する巨大津波の存在、その最大の高さは9mに達するものであることが東北大学箕浦教授の『貞観津波による津波被害の定量的評価(2005~2007年)』で明らかにされました。
また、同教授はその論文の発表に遡って2001年には東北大学広報誌・まなびの杜に『津波災害は繰り返す』を寄稿され、その中で既に巨大津波の周期性と最大高さについて言及されていました。
そこで、今回は原子力発電所における津波への対応はどうなっていたのかを一つの事例を基に考えてみようと思います。

それは2007年に開催された『地震・津波に関する原子力防災と一般防災に関するIAEA/JNES/NIEDセミナー』で、東北電力の橋本泰男氏によって発表された『女川原子力発電所における津波に対する安全評価と防災対策』の中に見ることができます。
全14ページのPowerPointによるプレゼンテーションで、実際の東北電力における津波対策を、上のセミナーのためにまとめられたものと思われます。
写真の左上から始まり右下で終わる全14ページですが、中身の12ページについてその内容を説明したいと思います。

[2ページ]
東北電力の持つ2つの原子力発電所、青森県の東通原子力発電所と宮城県の女川原子力発電所の位置と概要が示されています。

[3ページ]
女川原子力発電所の安全評価のフロー図が示され、既往津波高さの調査、支配的な歴史津波の選定、数値計算、予想最高水位と予想最低水位、と続いています。
そして、フロー図の最後に評価として、津波遡上による陸上構造物の被害なし、最低水位時の原子炉冷却用水量の確保、と結ばれています。

[4ページ]
文献調査として、多くの津波が三陸沿岸に来襲したことが挙げられ、日本で発生した869年貞観津波,1611年慶長津波,1896年明治三陸津波,1933年昭和三陸津波と、海外のプレート境界津波である1960年チリ津波が示されています。

[5ページ]
同じく文献調査として、南三陸地域でより大きな被害をもたらした1611年慶長津波,1896年明治三陸津波,1933年昭和三陸津波の比較がされています。

[6ページ]
同じく文献調査として、1896年明治三陸津波,1933年昭和三陸津波, 1960年チリ津波の比較がされ、女川原子力発電所周辺での津波高さが示されています。

[7ページ]
考古学的調査と堆積学的検証として、869年貞観津波と1611年慶長津波が比較され、ここで前者の津波高さが2.5~3m(調査結果)、後者は6~8m(文献による)とされています。
ここで示されている数字は箕浦教授の解析結果とは異なりますが、明らかに不利な材料を基により高い安全評価を導き出そうとしている姿勢が読み取れます。

[8ページ]
同じく考古学的調査と堆積学的検証として、869年貞観津波の浸水域想定ラインが示され、浸水域の範囲から津波高さが2.5~3mと見積られるとしています。

[9ページ]
数値計算のパラメーターが示され、それを基にしたシュミレーションから最高水位と最低水位を導き出すフローが描かれています。

[10ページ]
数値シュミレーションの結果として、海から原子炉建屋に至る断面が示されています。
そして、最高水位と敷地標高との関係と、最低水位とその状態での原子炉冷却用水確保の説明が明確に示されています。

[11ページ]
評価結果が次にようにまとめらています。
 →安全評価を実施し、その結果は国の安全審査によって確認されていること
 →1611年慶長津波を支配的津波としたこと
 →数値計算の結果、最高水位は敷地高さ以下になったこと
 →同じく、引き潮時の最低水位は取水口敷高を数分間下回るが、原子炉の冷却用水量は取水設備に十分確保できること

[12ページ]
津波に対する防災対策(気象庁から津波警報が発せられた場合)として、海岸線の+3.5m地盤にいる作業員は+14.8mの敷地地盤に避難することや、保安員の召集と監視強化などが挙げられています。

[13ページ]
津波に対する防災対策(津波が発電所に来襲した場合)として次の3つが示されている。
 →原子炉等の主要機器やポンプを安全に制御
 →循環水ポンプは最低水位で自動的に停止
 →原子炉冷却用水は取水設備内に確保

これが東北電力の間違いなく襲来する巨大津波に対する原子力施設に対する安全評価と防災対策です。
これらの津波に対する姿勢は他の広報でも見受けられ、或る特別なセミナー用にまとめられたものではないことは明らかです。
残念ながら東北電力以外で、津波に対するこのような安全評価と防災対策とを示している電力会社は他にはありません。

今回は2000字になりました。
まだ、終りではありません。
by finches | 2011-04-07 05:02 | 無題


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