646■■ 津波想定高さ 14 -ウォールストリートジャーナル
b0125465_12443552.jpg[Photograph source]
http://www.houseoffoust.com/fukushima/model.html





想定外の巨大地震の、想定外の巨大津波による、想定外の津波高さのための、想定外の原発事故、ならばその想定値とは一体幾らだったのかを解明したくなり論考を重ねています。
しかし、もう一つ忘れてはならないことがあり、本稿ではそれを取り上げます。
それは、原子炉のオーバーヒートを防止する為に復水器で熱交換(冷却)を行う為の海水を汲み上げるポンプの設置レベルをどうしてあのような低い場所にしていたのか、非常用電源はどうして海面レベルとほぼ同じ地下1階に置かれていたのか、何重にも用意されていたバックアップの全てがどうして同時にダウンしたのかといったことです。

以前に3月23日のワシントンポストに掲載された 『Japanese nuclear plant’s safety analysts brushed off risk of tsunami (日本の原子力プラントの安全アナリスト、津波のリスクを無視)』 を取り上げましたが、同じ3月23日のウォールストリートジャーナルには 『Japan Ignored Warning of Nuclear Vulnerability (日本は原子炉の脆弱性への警告を無視)』 という記事が掲載されています。

それによると、日本では数ヶ月前から原子炉の新しい冷却技術についての協議が行われていて、それは福島第一原発を襲った非常用電源の全てが失われたことによる事故を、軽減もしくは阻止することができたかも知れないとした上で、しかしながら日本の原子力当局と東京電力は現行技術で臨む方針を変えず、既存原子炉の脆弱性を無視する選択を行っていたというものです。

下にこの記事へのリンクを貼っておきますので、正確にはそちらをお確かめください。
Japan Ignored Warning of Nuclear Vulnerability   
   By THE WALL STREET JOURNAL
    By Norihiko Shirouzu and Peter Landers,Wednesday,March 23


   →http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703410604576216481092750122.html

今や原子炉は第7世代のESBWRの開発が進められています。
ESBWRはEconomic Simplified Boiling Water Reactorの頭文字を取ったものです。
このESBWRには上の原子炉の新しい冷却技術が使われていて、非常時の炉内蒸気の凝縮、即ち炉圧上昇の抑制を行う非常用復水器を備えています。

非常用復水器は福島第一原発で採用されていたような何重にも電気的にバックアップを行うような 『動的』 な装置に対して 『静的』 な装置と呼ばれ、例え何重にもバックアップされていてもそのシステム自体が同一であるが為に電源供給が止まった途端に全てがダウンするという今回のような事態から、過剰に電気的なものに頼らずシステム全体の安全を保持するものです。
そして、コストが安くメインテナンスが容易というメリットもあります。

実はこの非常用復水器ですが、福島第一原発の1号炉には使われていて、実際にバックアップ機能が失われた後もこのシステムは機能したことが分っています。
上の写真は左側が福島第一原発1号炉の図面で、中央が原子炉、その下のドーナツ状の二つの円がサプレッションプール、左上にある2つの円が非常用復水器です。
写真の右側は福島第一原発1号炉と同じMARK1型という原子炉の模型で、足元のドーナツ状のものがサプレッションプールです。
 [筆者注記:青く塗った冷却水は筆者による加筆]

福島第一原発では原子炉を冷却するための水を確保するために地下水の試掘を行った記録が残っています。
現在福島第一原発の冷却水は坂下ダムからパイプによって送水されています。
1号炉の運転開始が1971年、坂下ダムの完成が1973年、2号炉の運転開始が1974年、これだけを見ても冷却方法と冷却水確保の歴史を読み取ることができます。
そして、もう一つのことをここから読み取ることができます。

それは、2号機以降は潤沢に冷却水が確保されたこと、そして既に1号機が完成していることで互いの発電による電源のバックアップが可能になったこと、原子炉の国産化への移行に際しGE (1号炉の製造メーカー) とは一線を画するより高度な国産技術による独自の安全対策の構築、これらが1号炉に備わっていた 『静的』 な非常用復水器の設計コンセプトから離れ、独自の何重にも巡らされた電気に依存した同一バックアップシステムを構築し、それ故に 『新しく古い技術』 の導入を軽視したのだと思います。

もし、この1号機の非常用復水器が原子炉の暴発を食い止めていたらと思います。
しかし、残念ながら短い時間の非常事態をサポートするもので、親や子のシステムも失われた状態で、この孫のようなシステムだけで原子炉の暴走を止めることはできなかったのでしょう。

『Japan Ignored Warning of Nuclear Vulnerability』 では ‘Retrofitting older plants’ について触れられています。
日本はこの ‘Retrofit’ についての考え方が文化国家において最も遅れている国でしょう。
この古いものを改修して使う、古いものを再生する、この大切な文化を日本はもう一度考え直さなければならないことを、この ‘古くて新しい’ 非常用復水器は語っているように思います。
by finches | 2011-04-19 05:18 | 無題


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