東京電力と原子力安全・保安院は津波に対してどのような検討を行い、その結果からどのような数値を導き出し、それをどのように安全・防災計画に反映してきたのかを考えてみようと思います。 因みに津波のことは地震随伴事象と呼ばれ、このキーワードで検索するとより多くの資料に辿り着くことができます。 津波の想定高さを調べていて、泊原発(北海道、北海道電力)、東通原発(青森県、東京+東北電力)、女川原発(宮城県、東北電力)、福島第一及び第二原発(福島県、東京電力)、浜岡原発(静岡県、中部電力)、柏崎刈羽原発(新潟県、東京電力)、これらの中で福島第一及び第二原発だけが津波の検討に係わる資料や、その検討を行った形跡を見つけることができませんでした。 また、この二つについては原発施設の計画概要書や建設申請書などの資料も見つけることができませんでした。 したがって、めぼしい資料のない福島第一原発で想定されていた津波の高さを推定するためには、周囲の関連する資料を通して考えて行く意外に方法はありません。 [筆者注記] 福島第一及び第二原発における地震に対する検討書は存在します。 例えば女川原発に関しては原子炉設置の安全性について書かれた中に津波への記載が見られますし、東通原発に関しては原子炉設置許可の申請概要の中に、より具体的にT.P.+6.5mという数字を見ることができます。 このT.P.+6.5mは東通原発の現施設概要にも公表されていて、誰でもその数字をホームページ上で確認することができるようになっています。 さて、次に具体的な津波の想定高さについて見ていこうと思います。 公表されている各原発において基準にしているレベルをそのまま明記します。 相互の基準レベルの取り方に違いはありますが、津波想定高さと敷地地盤面高さとの相対的な高さ関係はそのまま比較することができます。 東通原子力発電所 (東北電力) 建屋地盤レベル T.P.+13m 津波想定レベル T.P.+6.5m 両者のレベル差 6.5m [筆者注記] この発電所は東電と東北電力の施設ですが、東北電力の主要施設として扱いました。 女川原子力発電所 (東北電力) 建屋地盤レベル O.P.+14.8m 津波想定レベル O.P.+9.1m 両者のレベル差 5.7m 柏崎刈羽原子力発電所 (東京電力) 建屋地盤レベル T.M.S.L.+5m 津波想定レベル T.M.S.L.+3.24m 両者のレベル差 1.76m 福島第一原子力発電所 (東京電力) 建屋地盤レベル O.P.+10m (設計図面に記載が見られます) 津波想定レベル O.P.+5.7m (東電の発表だけでその算出根拠は不明です) 両者のレベル差 4.3m [筆者注記] 東京電力内部資料にはもう一つ別な、3.1mという津波想定レベルが存在しますが、こちらについては改めて取り上げます。 本稿の趣旨は建物地盤レベルと津波想定レベルの差が、東北電力の東通原発では6.5mだから十分だとか、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所では1.76mだから十分ではないとか、そのことを言おうとしている訳ではありません。 その判断はそこにある諸々の与条件で判断されるべきものだと思うからです。 問題は津波想定レベルの設定の仕方にあると思います。 現在はアクセスできなくなりましたが、以前は福島第一発電所のホームページの建物概要の中には、過去に起きた最も大きな津波を考慮した対策がなされているという旨の説明がされていました。 上の写真は9mの津波が福島第一原発の直ぐ北に位置する相馬から仙台平野を襲った869年貞観津波の想定域と、東京電力が固執していた塩屋崎沖地震の想定域(下のピンクの部分)とを合成したものです。 赤い丸は上が女川原発、下の二つが福島第一及び第二原発の位置を示しています。 [筆者注記] 塩屋崎沖地震については第32回議事録、第33回議事録参照 東京電力(西村)と原子力安全・保安院の名倉安全審査官は、この塩屋崎沖地震だけをあくまでも検討の対象とし、産業技術総合研究所の岡村行信氏は、どうして貞観地震と切り離して考えるのか、この沿岸には塩屋崎沖地震、宮城沖地震、三陸沖地震とそれぞれの地震が繰り返されており、それらを繋ぐ範囲に亘る大地震もまた歴史的には繰り返されており、それがこの貞観地震と考えるべきだと繰り返し主張されていました。 上の写真から塩屋崎沖地震と貞観地震の震源が近いこと、貞観津波を考えるならば福島第一でもその津波の被害は予想可能であったことが分ります。 それは隣接する女川原子力発電所における津波への対応、即ち津波想定高さ9.1mからも明らかではないかと思います。
by finches
| 2011-04-21 05:48
| 無題
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