■■ 福島第一原子力発電所における津波想定高さの考察 10~12
10.研究員の指摘-東京電力と土木学会

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3月21日に東京電力の武藤栄副社長の会見が行なわれました。
その中で今回の津波を想定外とする根拠は、土木学会の指針に基づいて決められた5.4~5.7mの設定値の2.5倍近い津波の襲来によるものだということが強調されています。
今回の津波を未曾有と表現し、避けることはできなかった天変地変であったという印象を植え付け、詰る所東京電力側に責任はないという間接的な言い回しが見て取れます。

この土木学会の指針というのは『原子力発電所の津波評価技術(2002年)』のことですが、3月28日に上の記者会見を追うように、土木学会原子力土木委員会の津波評価部会によってそのPDFファイルが公開されています。
しかし、かなり慌てて作業をした模様で、流石に数百ページの資料の改ざんまではできなかったと思いますが、それ以外の部分には慌てて行った辻褄合わせの改ざんの痕跡が残されています。
例えばその一つに委員名簿の書き換えなどがあります。

ここからはリンクを貼った記事をお読みください。

『環境エネルギー政策研究所・客員研究員,田中信一郎氏(3月22日付)ペーパー』
 →http://www.isep.or.jp/images/press/report_0322.pdf

『原子力発電所の津波評価技術(2002年)』
 →http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/node/5

『原子力土木委員会津波評価部会委員名簿』
 →http://www.jsce.or.jp/committee/ceofnp/Tsunami/tnmlist.html

衆議院議員・河野太郎氏のブログで、田中信一郎氏の記事を取り上げておられますが、記事の最後にあるリンク先から核燃料サイクル問題に関するビデオを是非ご覧ください。
 →http://eritokyo.jp/independent/aoyama-fnp035..html



11.ワシントンポスト

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先月の3月26日から27日にかけて国内の新聞各社のWeb版には同じ内容の掲載が続きました。
それは津波の専門家によって、福島第一原発沿岸に巨大津波が襲うリスクについての指摘と警鐘が既になされていたという内容でした。
時事や共同通信を始めとしてどの記事も根拠としているソースは同じと思われましたが、北海道新聞国際版だけはワシントンポストの報道としてそのことを伝えていたのが印象的でした。
しかし、北海道新聞がワシントンポストから紹介したのはその記事のほんの一部で、元の記事は全行にわたって専門家による巨大津波のリスクについての指摘を伝えるものでした。

ワシントンポストのタイトルは『Japanese nuclear plant’s safety analysts brushed off risk of tsunami』で、『日本の原子力プラントの安全アナリスト、津波のリスクを無視』と訳せます。
下にこの記事へのリンクを貼っておきます。

 →http://www.washingtonpost.com/world/japanese-nuclear-plants-evaluators-cast-aside-threat-of-tsunami/2011/03/22/AB7Rf2KB_story.html

この記事を短く要約することはその内容から出来ませんので、筆者の拙い訳ではありますが紹介したいと思います。



Japanese nuclear plant’s safety analysts brushed off risk of tsunami
   By The Washington Post
    By David Nakamura and Chico Harlan, Wednesday, March 23

 
『日本の原子力プラントの安全アナリスト、津波のリスクを無視』

福島第一原発を数年にわたり評価していた日本の政府機関は、津波の危険が原子炉にはあるという専門家委員の一人からの危惧を退け、発電所の安全を宣言していた。
著名な地質学者である岡村行信は日本にある16の他の原子力発電プラントと同じように巨大な自然災害に耐えるように、福島第一における準備の検討を原子力安全・保安院主催の2009年6月の会議の中で、津波に弱いことを警告した。

しかし、第一原発についての議論の中で東電 (直訳では公益事業会社:筆者注) と政府は、地震の脅威をより大きく印象付けようとしていると思い、岡村の指摘は東京電力の役員からあっさりと拒絶された。
その結果、第一原発の脆弱さをマグニチュード9.0の地震が日本の東北沿岸を襲った3月11日に明らかにした。

専門家たちは今、福島原発は設計通りに地震には耐えたと言っている。
施設の重要な非常電源装置を破壊し、原発の緊急事態を招き、その結果として放射線を拡散しているのは、20フィートを超える (地震の:筆者注) 後で起こった津波によるものだと言っている。
[中略]
「私はこれを調査するようもっと強く力説しなかったことを悔いている」と、政府の調査研究所の所長である岡村は言った。

第二次世界大戦以後の日本における最も大きな危機である三つの災害は、23,000人以上の死者と行方不明者を出し、その損害額は3,000億ドル以上と政府は見積もっている。
核危機の結果は最も広範で長期の影響をもたらしそうであり、それは核の安全基準と核エネルギーへの依存について各国に再調査させることになる。
[中略]

地震の頻発する島国日本ではエネルギーの30%を17の発電所にある54の原子炉に依存しているが、1995年に起きたマグニチュード6.9の阪神淡路大震災は核のセーフガードと建設基準の改善を要することを政府に促した。
新しいガイドラインは地域ごとの歴史的地震活動をベースにして、それぞれのプラントの基準をつくった。

2008年、原子力安全・保安院はエンジニア、地質学者、地震学者からなる委員会にセーフガードの再調査と修正を促すように命じた。
専門家たちはそれぞれの原発を審査するよう割り当てられたが、グループのメンバーの一人によると、何に焦点を当てるかは原子力安全・保安院によって大部分が前もって決められていて、それは地理的なものや歴史的記録のようなものに基づくものだった。

例えば東京の南西に位置する静岡県の浜岡原発では、審査委員たちは地震と津波によって起こるリスクを厳密に見るように求められた。
その(浜岡)原発は主要な断層線に沿って位置していた。
しかし、福島第一は東北海岸にあり、再調査委員会は大きな津波は起きそうもないという理由から、地震に焦点を当てるように指示されたと、委員会のメンバーの一人であり産業技術総合研究所で地震断層を研究している吾妻崇は語った。

福島第一を調査するように割り当てられた7人の委員会のメンバーの中には、誰も津波の専門家はいなかったと吾妻は語った。
2008年4月から2009年6月までそのグループによる22回の会合が持たれたが、原発に最も近い断層によって引き起こされる地震の被害についてほとんどが話され、津波のリスクについて審議されることはなかったと、吾妻は語った。

福島第一の委員会はその再調査を終え、そして2009年6月24日、40人からなるより大きい合同会議に答申を提出した。
そこに産業技術総合研究所に勤務している岡村(行信)がいたが、初めて地震以上に津波が危険であるという考えを主張した。
869年、岡村は委員会に巨大地震 (貞観津波:筆者注) が日本の東北地方の仙台沿岸を襲い、内陸に2マイル以上津波による波が到達したことを告げた。

一握りの日本の津波の専門家たちによって災害は寓話的 (日本三代実録を指すと思われる:筆者注) 以上に、地質学の地層や沈殿した堆積物に集められた証拠に基づく結論が出されたのはごく最近 (1990年:筆者注) のことだ。
「調査結果は出たが、ここには津波に言及するものはなく、私は何故と尋ねたい」と、吾妻のワシントンポストへのコピーには、岡村がその会議で東京電力担当者に質問したことが書かれていた。
ご存知の通り、それ (貞観津波:筆者注) は歴史的津波ですと、東京電力担当者は関連を退けた。
[後略]




12.第32回議事録

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津波災害は繰り返す / 箕浦幸治



前稿でワシントンポストに指摘があった、再調査審査会の答申が提出された2009年6月24日の合同会議議事録の当該部分を掲載します。

最初に議事録にある発言者についての補足をしておきます。
  ○岡村委員
   岡村行信:独立行政法人・産業技術総合研究所,活断層・地震研究センター長
  ○東京電力(西村)
   西村功:東京電力、東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科教授
  ○名倉安全審査官
   名倉繁樹:原子力安全・保安院,原子力発電安全審査課

下に議事録本文へのリンクを貼っておきますが、本稿で取り上げたのは16~17頁です。

総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会,耐震・構造設計小委員会,地震・津波、地震・地盤合同WG(第32回)議事録
    日時:2009年6月24日(水)10:00~12;30
    場所:経済産業省別館10階 各省庁共用1028号会議室
    →http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/107/3/032/gijiroku32.pdf


(前略)
○岡村委員
 まず、プレート間地震ですけれども、1930年代の塩屋崎沖地震を考慮されているんですが、御存じだと思いますが、ここは貞観の津波というか貞観の地震というものがあって、西暦869年でしたか、少なくとも津波に関しては、塩屋崎沖地震とは全く比べ物にならない非常にでかいものが来ているということはもうわかっていて、その調査結果も出ていると思うんですが、それに全く触れられていないところはどうしてなのかということをお聴きしたいんです。

○東京電力(西村)
 貞観の地震について、まず地震動の観点から申しますと、まず、被害がそれほど見当たらないということが1点あると思います。 あと、規模としては、今回、同時活動を考慮した場合の塩屋崎沖地震でマグニチュード7.9相当ということになるわけですけれども、地震動評価上は、こういったことで検討するということで問題ないかと考えてございます。

○岡村委員
 被害がないというのは、どういう根拠に基づいているのでしょうか。 少なくともその記述が、信頼できる記述というのは日本三大実録 (日本三代実録:筆者注) だけだと思うんですよ。 それには城が壊れたという記述があるんですよね。だから、そんなに被害が少なかったという判断をする材料はないのではないかと思うんですが。

○東京電力(西村)
 済みません、ちょっと言葉が断定的過ぎたかもしれません。 御案内のように、歴史地震ということもありますので、今後こういったことがどうであるかということについては、研究的には課題としてとらえるべきだと思っていますが、耐震設計上考慮する地震ということで、福島地点の地震動を考える際には、塩屋崎沖地震で代表できると考えたということでございます。

○岡村委員
 どうしてそうなるのかはよくわからないんですけれども、少なくとも津波堆積物は常磐海岸にも来ているんですよね。 かなり入っているというのは、もう既に産総研の調査でも、それから、今日は来ておられませんけれども、東北大の調査でもわかっている。 ですから、震源域としては、仙台の方だけではなくて、南までかなり来ているということを想定する必要はあるだろう、そういう情報はあると思うんですよね。 そのことについて全く触れられていないのは、どうも私は納得できないんです。

○名倉安全審査官
 事務局の方から答えさせていただきます。
産総研の佐竹さんの知見等が出ておりますので、当然、津波に関しては、距離があったとしても影響が大きいと。 もう少し北側だと思いますけれども。地震動評価上の影響につきましては、スペクトル評価式等によりまして、距離を現状の知見で設定したところでどこら辺かということで設定しなければいけないのですけれども、今ある知見で設定してどうかということで、敷地への影響については、事務局の方で確認させていただきたいと考えております。
多分、距離的には、規模も含めた上でいくと、たしか影響はこちらの方が大きかったと私は思っていますので、そこら辺はちょっと事務局の方で確認させていただきたいと思います。 あと、津波の件については、中間報告では、今提出されておりませんので評価しておりませんけれども、当然、そういった産総研の知見とか東北大学の知見がある、津波堆積物とかそういうことがありますので、津波については、貞観の地震についても踏まえた検討を当然して本報告に出してくると考えております。
以上です。
(後略)
by finches | 2009-04-02 01:06 | 無題


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