660■■ イチイ
660■■ イチイ_b0125465_839453.jpg


束帯とは平安時代以降の天皇以下公家の正装をいう。
その束帯を着用する際に右手に持つ細い板を笏(しゃく)と呼ぶ。
昔この木から笏を作ったことから、位階の一位に因みこの名がつけられたという。

北海道の方言でイチイのことをオンコと呼ぶのは知っていたが、秋田方言辞典にはそれについての解説があるらしい。
それによるとオンコはアイヌ語onkoに由来し、別にラルマニ(larma-ni)とも言われていたらしい。
だが、オンコは松前の方言でアイヌ語ではラルマニというともあって、その語源についてははっきりしないようだ。

イチイは年輪の巾が狭く緻密な木で、外形は太くても成長を続ける辺材を残して内部の心材部分は空洞になっていると聞いた。
また、イチイは雌雄異株で水松とも呼ばれ、秋に熟す赤い実は肉が厚くとても甘く美味いらしい。

イチイは函館市の木として知る人ぞ知る。
そのせいか街の中でも郊外でもこの木はよく目にすることができる。
だが、この写真ほどの巨木を見るのは初めてだった。
しかもそんな巨木が何本も立っていて、その姿は幻想的ですらあった。

その雄姿を見ながら、もし森で道に迷って霧の中にこの巨木が現れたら、きっとゾッとするだろうと思った。
だが、その巨木が枝いっぱいに真っ赤な実を付けていたら、その大きな包容にホッとし安堵するようにも思った...。

by finches | 2011-06-03 08:48 | 時間


<< 661■■ イノデ 659■■ かたつむり >>