どこで見る夕日も美しいと感じるのは、その景色の中にその時々の心理が重なっているからだと思う。 その日あったことや出会った人のこと、近い思い出、遠い記憶、そして今の気持ち、それらが沈みゆく夕日に重なり心に感じる美しさを増幅させるのではないだろうか。 尾根から見る分水嶺に消えゆく夕日、里から見上げる山に沈む夕日、海を照らしながら山並みに沈む夕日、海に溶けるように落ちてゆく夕日、街や橋を刻々閃光の鏡に変えながら消えてゆく夕日、夕日にはそんな様々な表情がある。 2年前まで函館のこの夕日の中には2基のゴライアスクレーンがあった。 どこからも見ることができた函館のランドマークが消えた今、焦点を失った函館ドックの先に広がる海の、そのまた向こうの山並みに沈む夕日だけが変わらずにあった。 港からの夕日、入舟の漁港からの夕日、外国人墓地からの夕日、どれもそれぞれに美しい。 だが、一番は穴間からの夕日だろう。 今では立ち入りが禁止されているかつての海水浴場、そこに漂う人々で賑わっていた動の哀愁と、そこから見る静の夕日とが重なった美しさがそこにはあるように思う。 そんな穴間からの夕日を思い出し懐かしんでいると、その海を真っ赤な夕日を背に港へと向かう青函連絡船の美しい写真が目に浮かんだ...。
by finches
| 2011-06-09 04:20
| 時間
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