縦に真直ぐに入った線は鋸挽きの跡だ。 細いのは手鋸によるもので、太いのは電動の丸鋸によるものだ。 前者の溝巾は1ミリ、後者は2ミリある。 この場合の溝巾の違いは鋸の厚みによるものだが、厚み以外にもあさりの違いによって溝巾には差が生まれる。 あさりのない鋸を使うと手鋸で挽いたものより更に細い線をつくることができる。 歯振と書いてあさりと読む。 あさりとは鋸歯の先に作られた振れのことで、挽き巾を広げて鋸と木との間の摩擦抵抗を少なくし、鋸屑を外に出す役目も持っている。 目立てでは鈍くなった歯先を鋭く研ぐと共に、このあさりの狂いも補正されるが、左右対称にきちんとあさりが出来ていると、歯の間に針を入れるとスーと流れるようにその間を滑り落ちて行くと聞いた。 左右であさりが狂っていると、真直ぐに切ろうとしてもその癖のある方に鋸が進むそうだ。 だから、真直ぐ切れない場合は腕だけではなくこのあさりが狂っている可能性もある。 だが、今の機械加工された鋸は良く出来ているから、真直ぐ切れないとすればあさりではなくやはり腕の問題だろう。 写真の溝は和紙を挟むための溝巾を決めるためのものだが、腕のいい大工の仕事はこんな線ひとつを見ても気持ちのいいものだ。 頭で考えたものをこうして形で確かめてみると、改良すべきことと同時に、また新たなテーマも見えてくるものだ...。
by finches
| 2011-10-19 05:31
| 無題
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