726■■ 続・組み立てる

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襖紙の貼り替えを頼みたい表具屋の主に三度目にして会えた。
一度目は不在で、戻る時間を確かめその時間に出直して来ると名を告げ帰った。
出直した二度目も不在で、今度は鍵まで掛かり人の気配すら失せていた。
次の朝、電話をすると、今日は遊びでゴルフに行ったと言う。
仕方なく連絡を欲しいと頼み電話を切った。

そんな遣り取りから、想像以上の腕の持ち主ではないかと思った。
堅物で手ごわいが腕は良い、そんな職人ではないかと想像した。
三度目に訪れた時、主は戸口まで出て迎えてくれた。
耳が遠いのは奥方と同じらしい。

紹介者の名を告げ、次に何故頼みたいかを説明したが、どうやらほとんど聞き取れていないようだった。
作業台の上には、紙と筆記具、襖紙の見本帳、そして住宅地図がきちんと並べて置かれていた。
そして、先ずは襖紙から話は始まった。

どうやら高齢で耳も遠く大きな仕事は断っているようで、襖二枚ならやってもいいと主は言った。
近く表具屋を廃業することを考えているとも言った。
紙は『鳥の子』でと頼むと、用意されていた見本帳は下げられ、新しい見本帳が置かれた。

紙を選び次に引手も換えたいと言うと、安物しかないと言う。
取り寄せも出来るが50個単位と言う。
欲しいのは二個で、廃業を考えている主に取り寄せを頼むのは酷だと思った。

仕方なく、引手はこちらで用意し届いたら連絡すると、紙の手配だけを頼んで主と別れた。
引手は富山県の高岡の金物屋に注文した。
きっと週明けには届くだろう。

襖の貼り替え一つでも様々なことを経験するものだ。
その主はもっと若い表具屋を紹介するからと言ったが、それを断った。
紹介者が一人名を挙げたこの主こそがこの仕事を頼む相手と決めていたからだ。

引手の手配を終えると、件のカレンダーの組立に入った。
音楽を聞きながら『角をシャープに』を心掛けて真剣に紙を折り、一つ二つと組み立てていった。
引き出し42個の完成は遠い。
そこで、朝の計画通りにいつもより早めの温泉に出掛けた。

外はまだ暗いが雨の音が聞こえている。
日曜日の今日も雨だろう。
そんな日は箱を組み立てるのに向いている。
今日、若しかしたら、カレンダーは、完成するかも知れない...。

by finches | 2011-10-30 03:31 | 時間


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