732■■ 秋鯖の味
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まだ暗い窓の外からは激しい雨音が聞こえる。
確か今日と明日は祭りの筈だが、この雨では客足の心配も然ることながら準備もまた大変だろう。
昨夜、温泉帰りに前を走る車のナンバーが『なにわ』で、所帯道具一式を乗せて旅でもしているのかと思いながら積まれた箱の文字を目で追うと、それは『だんご』と読めた。
『だんご?』と思いながら他の荷物に目をやると、リアガラスに密着するように詰まれているものがガスボンベであることが分った。
それらから、全国津々浦々の祭りを追って移動する流しの露店の車だと分った。
おそらく今日は朝から準備をする予定だろうが、せめて雨が小降りになってくれれば助かるだろうにと思った。

さて、今朝は料理のことを書こうと思う。
料理と言ってもただ鯖のことを書くだけだが。

市場で買った四本の秋鯖は軽く天日に干した切り身も〆鯖も三日で平らげた。
切り身は二枚に下ろした骨付きの方の片身を、筆者たちには二つに切り分け、両親たちには三つに切り分けて干した。
軽く塩をして干してやると生とは違い水分が飛んでいる分扱いやすく、それぞれをラップして保存しておけば、必要に応じて焼けばいいし、食の細くなった両親は更にその一切れを二つに切って一回の食事にあてることもできる。

〆鯖を作る時は塩で水分を抜く時間と酢の中に入れておく時間でいつも悩む。
塩○○分、酢○○分とか、塩○○時間、酢○○時間とか能書きを言って然も知っているようなことを言う人も多いが、大体この手の話はその本人も実はよく分ってはいないもので、要は好きにやってみればいいのだ。
注意することを一つだけ挙げるとすれば、酢に長く漬けすぎないことくらいだろう。
季節やその日の天気や温度や湿度にもよるが、酢に漬ける時間は筆者の場合、長くても2時間までと考えている。

塩を落とすには酢を使うのがいいが、今回は氷水で素早く塩を洗い流し直ぐに水気を拭き取った。
水道のぬるい水で直接塩を洗い流すのはやってはいけない。
酢から上げた鯖から素早く酢を拭き取ることも美味い〆鯖を作るには欠かせない。
この単純なことを必要以上鯖に触れず素早く丁寧にやれば誰でも美味い〆鯖を作ることができる。

後は、冷蔵庫に寝かせておいた日数でその味は変化する。
その味の変化を毎日楽しむのもまた楽しいものだ。

函館の宝来町に美味い寿司屋があるが、そこでは、これはさっき〆たばかり、これは一日前、これは三日前と言って〆鯖を出してくれたり、更にそれに一手間かけ炙って出してくれたりする。
それ程複雑で奥が深い。
その店の主人などは塩と酢の時間なども隠さず教えてくれるが、その時間を守ったからといって同じ味になる訳では勿論ない。

店主からはプロとしての余裕が感じられる。
だが、筆者も負けじと自作の〆鯖を持参して味見を請うたこともある。
鯖一つにもそんな数々の思い出がある、それを懐かしく思い返した...。

by finches | 2011-11-05 04:16 | 嗜好


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