738■■ 柿とスズメバチ

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去年と違い今年は柿が実をつけない。
だからあんなに来ていた小鳥たちの姿も今年はなく、カラカラと落ちる落葉の音だけが時折聞こえるくらいで淋しいものだ。
実をつけないとは言っても全くのゼロではないのだから、空から熟した赤い実を見つけたら下りてきて食べても良さそうなものだ。
あの貪欲なヒヨドリやカラスさえも寄り付かないのだから、今年は空の上からもさぞ魅力のない木に見えるのだろう。

今年はその実を一つも食べていない。
去年は熟れた実を木から直接もいで、その場で皮を剥いて頬張ったことがまるで嘘のようだ。
少ない実はおまけにどれも高い所にある。
その実は熟してその重さに耐え切れなくなると下に落ちて来る。
赤い実が落葉の上に落ちているのは風情があって良いものだが、支えきれずに落ちた熟柿は水を入れた風船が落下して割れたように、潰れて辺りに飛び散る。

それは余り綺麗なものではない。
だが、この潰れた熟柿はスズメバチには恰好のご馳走で、スズメバチが飛んでいるなと思うと決って潰れた柿が落ちている。
スズメバチはいつも一匹だけだから、きっと巣は遠くにあるのだろう。
ある時偶然にこの柿の木の下で潰れた熟柿の甘さに出合い、仲間にも秘密にしてその味を独り占めしているのだろう。

スズメバチは一心不乱で、近付いても逃げもしない。
だが、皮を破ることはできないから、食べられなくなったら食べ易いようにその実をひっくり返してやる。
良く見ると小さな生物もこの一つの実に群がって一生懸命食べている。
そして、最後に残った皮は土に帰る。

もう直ぐこの木から実がすべてなくなり、葉も落ち、寒い季節がやって来る。
一年を四季で考えると、春も夏も秋も冬も平等に三ヶ月で巡っていく。
こんな国は世界に二つとないだろう。

立冬も過ぎ季節は冬だ。
何も纏わない冬の柿の木もいいものだ...。

by finches | 2011-11-11 05:05 | 時間


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