742■■ 穭田

b0125465_6415129.jpg


日曜日に撮った写真は12枚、被写体として選んだ場所は6箇所。
今朝それらを見ていて、散策の途中で遠くなった温泉を振り返って、たった一枚だけ撮った景色に目が止まった。
一番奥の煙ったように見える谷間がその温泉になる。

川はその谷間に向かって流れ、穭田は筆者の背中側にもどこまでも続いている。
人ひとり見当たらない、車も来ない。
こんな景色を眺めると、いつも、もっと美しかった時代の景色を想像してみる。
舗装されていない道路、ビオトープさながらの川、使わない田や畑などない生き生きとした田畑、よく手入れされた畦道、草が綺麗に刈られ土の丸みを見せる田んぼの土手、その中での人とその暮らしを想像してみる。

そんな想像に耽りながら歩いていると、道路下の家で柿の実をもいでいる光景に出合った。
見ると若い夫婦で、脚立を両手で主人が押さえ、その上に載った夫人が慣れない手つきで楽しそうに高枝鋏を使い柿をもいでいた。
山裾には竹があんなにふんだんにあるのだから、竹の先を割って作った柿取り棒を使う方が、風情もあってもっと楽しいのにと思いながらも、中々上手く取れない高枝鋏での柿取りを笑いながら、会話を交えながら楽しんでいる夫婦の姿が、かつて美しかった時代の人とその暮らしを髣髴とさせた。

ふと視線の中で薄暗い部屋の片隅で点滅している電話が目に留まった。
留守電を聞いてみると、注文してあった竹が用意できたという連絡だった。
その青竹もこの温泉に来る途中の山からのものだ。
何か不思議な縁だ。
だが、それは偶然の縁ではないように思う。
必要とするものを求め自らの足で捜し歩いた先にあったもの、それは必然の連鎖のように思える...。

by finches | 2011-11-15 03:50 | 無題


<< 743■■ 木六竹八塀十郎 741■■ 穭 >>