757■■ ホームの柱
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今では無人駅となったが、筆者が8キロ離れた中学に通学していた頃には随分と活気があった。
ホームにはよく手入れされた花壇があって、そこには赤い花が咲くボケの木があった。
その小さな駅は同じく通学に利用していた女子高生たちによって毎朝掃除がされ、小さな花瓶には花が絶えることはなかった。

ホームからはどこまでも続く広い海が眺められ水平線は丸く見えた。
目の前の海は海水浴場になっていて、海の家や飛び込み台があった。
海には小島が浮かび潮が引くとその島へ歩いて渡れた。

その駅のホームからの眺めも随分と様変わりした。
変わらないのは地平線の向こうに真直ぐ消えて行く線路くらいになった。
否、もう一つ変わらないものがあった。

それはホームにある待合の屋根を支える鉄の柱だ。
随分古いものではと調べてみると、その駅の開業は大正14年(1925年)だと分った。
その後の駅の変遷からみても、その鉄の柱は昭和の初め頃のものに違いないと思われた。

この鉄の柱の柱脚が昔から好きだった。
ユニークな形も取り付けのディティールもいいが、何より味がある。
無人駅となり置き去りにされたことで、幸いにもこの古い鉄の柱は昔のまま残された。

だが、砂浜から走って飛び込んだ海はもうない。
置き去りにして欲しかった砂浜も海も、何重にも、これでもかと、人の手が入り続けてしまったから...。

by finches | 2011-12-06 05:17 | 時間


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