762■■ 杯
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昨年、とある偶然から一人の男と知り合った。
そして、彼の銘木店から桧と栗の板を買い求めた。
全国に銘木店は数多あれど、これ程の店に出合ったのは初めてだった。

初めて訪れた時、その倉庫を見せてくれそれだけでも驚いたが、続いて港近くの保管場所にも案内してくれ、そこに堆く積まれた銘木にはいやはや垂涎の溜息をついた。
中でもお寺に納めるためのストックだという栗材は、分厚く一目で高価な良材だと分った。

その帰り、山間にある三軒の製材所を紹介してもらった。
後で聞いた話だが、夕方近くに店を出たその足で、直ぐに山間の三軒を訪ねたことに実は驚いたと聞かされた。
紹介された中の二軒とは実際に付き合った。
一軒からは杉の板とピーラー(米松の目の詰まった柾材)を、もう一軒からは栗と銀杏と松の端材を買い求めた。

二回目にその店を訪れた時、更に山の上の保管場所にも案内してくれた。
栗ばかりを置いている、それも寺用にという厚材はそれは見事なものだった。
その帰り、その店が納めたという重要文化財の寺に立ち寄った。
そして、そこに使われていた栗の厚板には天然の木の威厳と風格を感じた。

三回目にその店を訪れた時、彼の親父からこの杯をもらった。
その親父はとにかく銘木が好きで、後先考えずに買うのだと彼は嘆いていたが、この杯も何本か買った屋久杉の余り木から作ったというもので、これで飲むと美味いからと、寡黙で気難しそうな親父が一言口を開いて手渡された。

この屋久杉の杯を握ると木の温もりが伝わってくる。
親子で考え方は違っていても木への想いは同じなのだと、この杯を握る度に思う...。

by finches | 2011-12-11 05:22 | 無題


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