767■■ 白蟻の道
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離れの8畳は寒い所だった。
それは冬だけに限って寒いのではなく、夏でも涼しいなどとは程遠い、芯から冷えるそんな底冷えの寒さだった。
また、その部屋は下地が腐っているのか、歩くと嫌な下がり方をする箇所が随所にあった。

あの寒さで冬は越せないと、全ての畳を剥がしてみた。
すると、通常なら杉板の筈の座板全てにベニヤが使われ、そのベニヤが長年の湿気でふやけ、荷を支える力がなくなっていることが畳の下がる原因と分った。
そして、あの嫌な底冷えの原因もこのベニヤのせいだと分った。

ベニヤを全て取り除いてみると、大引の一本が白蟻にやられていた。
気持ちのいいものではないが、軟らかいところを上手いこと食べている。
大引と一緒に外した束に蟻道が残されていた。
白蟻は防蟻剤を塗った束は避け、何も塗られていなかった松だけを食べている。

目のない白蟻はこんな蟻道を作りながら床下に侵入し、垂直に上がれる場所を探してこの束の立つ束石にたまたまぶつかったのだろう。
そして、蟻道を上へと伸ばし一本の大引だけを食べ、何か知らの理由でこのせっかくの場所を放棄したのだろう。

目のない白蟻がこの土を固めた蟻道の中を行き交う様を余り想像したくはない。
だが、目のない白蟻が集団で行動するために、こんなトンネルを作る知恵を授けた生物の神秘には驚かされる...。

by finches | 2011-12-18 09:06 | 持続


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