787■■ 頭の中の地図
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空気は冷たかったが風もなく晴れて穏やかな日曜だった。
出発までの時間を筆者は本を読んで過ごし、家人は家事と自分の練習をして過ごした。
出発時間になると、二人分の温泉の用意を済ませた家人が嬉しそうにやって来た。

先ずはスタンドに立ち寄り越年の汚れを洗い落としてやると、古い団地の中にある店でチャンポンの昼食をとった。
かつて長崎で本場のチャンポンの味を知ってからその味には少しうるさくなり、東京でも行きつけのチャンポン屋が一軒あったが、その古い団地の中にある店が出すチャンポンは素朴でありながらそれらを凌ぐ程の味だった。

店を出ると好きな道を選びながら北に向かった。
ナビのない車、頭の中の地図の道は新しく好きな道に出合う度に、それらをシナップスのように繋いでいく。
もう随分前になるが新潟で仕事をした時の、田中角栄から聞いたという道路番号の付け方の話を思い出した。
一桁、二桁、三桁、その数字が持つ意味に成る程と得心したものだが、今は地図を広げてもかつて得心のいったその決め事のルールを思い出すことはできなかった。
だが、一桁の番号が付いた最初に造られた国道を繋ぐように網目のように延びていった数多の道はその数字が示していることだけは確かだった。

久し振りに訪れた洞窟を1キロ余り歩き、地上に出ると急な山道を2キロ下って車に戻った。
そして、その日の最後に行こうと決めていた温泉に向かった。
今まで頭の地図の表側と裏側にあった場所を一巡りした。
そこには表も裏もない風景が続き、人々の穏やかな暮らしがあった...。

by finches | 2012-01-09 06:18 | 時間


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