797■■ 姿を現した用水

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山城址から下山すると、もう一つの興味に頭は切り変わった。
麓から登って来た山並みを見渡すと、決して高くはないが平安時代の終わりにそこに山城を築いた地勢がはっきりと読み取れるような気がした。
そして、その山並みは河口の低地、あの『旦のつく場所』へと続き、T用水がその山並みの裏側で姿を消していることを考えた。
消えた位置とその方向、そして目の前にある景色から、用水が消えた理由は山裾を迂回する為で、再び用水が顔を出す場所がこの景色の何処かにきっとある筈だと思った。

山裾に広がる田んぼの先の景色は『旦のつく場所』の手前で、山と川はお互い引き寄せられるように一つになっているように見えた。
その景色を眺めながら、頭の中で「もし自分が用水を造るとしたら、どこを通すだろう」と考えながら、全く姿の見えない用水路のルートを予測しながら歩き始めた。

暫く歩くと山肌と田んぼの中にその痕跡かも知れないと思われるものが見えた。
筆者は先ず田んぼの中に小さく見えた標識らしき方角へと向かった。
そこで見たものはまさしく田んぼに口を開けたT用水の調整プールで、まるでそこで息を精一杯吸い込んで潜るかのように、直ぐに地下に姿を消し人家の下を通り山と川が一つになる方角へと真直ぐ向かっているようだった。

T用水が山に向かっていることが分れば、点検用のハッチを辿ればいい。
だが、これがまた神出鬼没で、次の点検ハッチは筆者の予想を遥かに超える場所に現れた。
だが一方、その高さまで上がっていることが分れば、山の中の隧道はそのレベルで水平に走っていることが予想された。
そして、ほんの一瞬だが隧道が地上に顔を出している場所を見つけた。
幸運にも葉を落とした冬木立がその姿を見させてくれた。

それは小さな谷を渡る2連アーチの隧道として現れ、一方は山肌に一方は人家の庭に消えていた。
この思わぬ発見で山の中を走る隧道の構造がはっきりと見えてきた。
一方、この高さまで水を揚げる方法についての新たな疑問も生まれた。

発見と疑問が錯綜する頭で車に戻った。
そして、振り返って用水のルートを確かめると、正に車を止めたその地下を用水は走っていた...。

by finches | 2012-01-19 04:35 | 遺産


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