799■■ 切出し

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切出しとは細長い鋼の先端に斜めに刃をつけた小刀を言う。
記憶に残る切出しと言えば鞘付の安物で、それで鉛筆を削ったように思う。
子供心に切出しは刃が鋭く危険で、用心して使わないと怪我をすると緊張したことを覚えている。
その頃は刃物は自分で研いで使うものだとは知らず、結局切れ味が悪くなりそのまま使わなくなってしまったように思う。
そして、そのうち刃を折りさえすれば新しい刃に蘇るカッターナイフを使うようになってからは、切出しのことを思い出すこともなくなっていった。

考えてみれば和包丁を使うようになってから刃物への意識が一変したように思う。
取り敢えずと買った和包丁は結局手にしなくなり、後に選んだものだけを使うようになった。
一昨年、三本あった鉋を大工に見せたところ、そのうちの一つだけは増しだと言われ、丁寧に錆を落とし研いでくれたその一本を手許に置いた。
昨年、取り敢えずと買った電動丸鋸は結局格下の作業にまわし、大工が使うプロ仕様のものを求め直した。

取り敢えずと買った和包丁と電動丸鋸、そして大工が安物と放り投げた2本の鉋、これらに欠けているのは切れ味と作りの丁寧さだ。
そして、その違いを通して実感したのが、よく切れる道具即ち良い道具とは安全だということだ。
そしてもう一つ、良い道具とは長持ちし、手入れさえ怠らなければ一生使え、使い込む程に風合が増してくるということだ。

そんな訳で切出しも竹専用のものを手に入れた。
安来青紙鋼を使って鍛造された切出しはズシリと重く手にピタリと馴染む。
刃の角度も実際に使ってみると成る程と思った。
何度か使ううちに硬い刃も刃こぼれを起こしたが、今では研ぐことを知っている。
刃こぼれは先ず粗砥で平滑に戻し、中砥で刃先を整え、仕上げ砥で磨くように研いだ。
研ぎはまだ上手くはないが、そのうちには上達もするだろう。

この切出しを手に入れたことで新潟県の与板という町と与板鍛冶のことを知った。
そして、今では長岡市の一部になっているその町をいつの日か訪ねてみたいと思った...。

by finches | 2012-01-21 04:03 | 持続


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