801■■ 用水が消える山
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闇雲に道もない山の中を踏査することは不可能で、だからこれは筆者の推測でしかないが、拙稿『姿を現した用水』から本稿『用水が消える山』、この間が完全な隧道であることにほぼ間違いはないと思われる。
地図の上ではこの隧道から先の表記が突然と消えているが、これまではそのことを地図が未完故だと考えていた。
だが、地図が未完ではないとするなら、開渠ではない部分を全て隧道として表記が統一されているとするなら、ここで地図から姿が消える意味も理解ができた。

T用水は田んぼの中に一瞬姿を現した後は鯨が深海に潜るように再び地上から姿を消し、次は揚水施設が見当たらないにも係わらず数メートルも高所に姿を現し、その次に再び現れる隧道出口は更に数倍高所に位置している。

T用水は全行程でサイホンと自然流下を併用したものであろうことは最初から想像出来た。
そして、筆者に強い興味を抱かせたのは、それが逆サイホンを駆使していることだった。
だが、筆者が頭に描くその断面は、最も高所に位置するダムの取水口からその流路は閉じたものでなければならなかった。

なのに、低い地上に平然と口を開けたかと思うと、揚水施設も無しにその水を高所へ高所へと揚げている。
どうしてそれが可能なのか、ポンプに頼らず水を高所に揚げるには、大気圧と水の自重による圧力差を利用するしか思いつかない。

シンポジウムの翌日は終日小雨模様だった。
そんな天気の中で見つけた隧道出口は筆者の疑問を更に増幅させた。
水をどうやってここまで揚げているのだろう、隧道はほぼ水平と予測したのに、何故登っているのだろうか、何故登れるのだろうか。
これではまるでエッシャーの騙し絵のようだ。

これまでもそうだったが、分ってしまえばそれで終わり、さして面白くもない。
だが、分るまで、疑問が解けるまでは実に面白い。
次は逆サイホンの模型実験にでも挑戦してみようか...。

by finches | 2012-01-23 05:57 | 遺産


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