805■■ 海-一月
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曇った窓を通して降りしきる雪を見ながら、これはもっと積もると子どものように心が躍った。
傘をさし長靴を履いて、一面真っ白に雪化粧した庭を横切って朝食に行ったことがそれ程楽しかったのか、雪の降る海を写真に撮ろうといそいそと準備を始めた。
膝までの長靴もこんな日の為にあるのだと云わんばかりに、次なる出番を待っていた。
だが、10センチ程も積もった大寒の雪も太陽が顔を出すとみるみる解けていった。

室温はこの冬一番の低さを示していたが、季節は確実に春に向かっているのだろう、当分は解けないと踏んでいた雪をたった一日で綺麗に消し去ってしまった。
寸時の差で海に降る雪を撮る絶好の機会は逃したが、あの雪と寒さがまるで嘘だったような明るく穏やかな海で昼食後の散歩を楽しんだ。

空の色が次第に春に向かっているのは感じていた。
冬の澄んだ青から空色に変わり、そしてこれから朧に霞んだ春の色に変わって行く。
だが、海はまだ澄んで透明な一年で最も綺麗な水が静かに寄せては返していた。

誰もいない海はいい。
丸い水平線の上の貨物船はまるで停まっているかのように小さく、漁をする船はまるで点のように小さくそれぞれが光って見える。
冬色に輝く海、高く広い空、凛とした空気、それらが澄んだ心を取り戻させる。

昔から海は考える場所だった。
埋立が海を奪い、小島が消滅し、堤防が砂浜を覆い、消波ブロックが景色をどれほど痛め付けようが、人間が手を付けようのない大海原と遠くの景色はちっとも変わってはいない。
そして、その海が考える場所であることも、ちっとも変わってはいない...。

by finches | 2012-01-27 05:07 | 時間


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