832■■ 豊かさの共存
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当時中学生だった記憶にこの建物ははっきりと残っている。
外観もそうだが、屋上の木々が何だか不思議に思えたことをはっきり覚えている。
この建物は旧海運会社の事務所兼住宅として大正4年(1915年)に完成したもので、左側の建物はそれよりもっと古い明治33年(1900年)完成の現役郵便局となる。

この事務所兼住宅ビル、一見、3階まですべて事務所のようで、住宅は屋上にあるのだろうと思いきや、これが全く違う。
事務所として使われたのは1階だけで、2階と3階すべてが住宅になっていて、しかも全部が和室だというから驚く。
そして、あの不思議に思えた木々は屋上庭園のもので、そこには茶室まであるというから更に驚く。

今でこそ屋上を植栽したり東屋や茶室を造るなど珍しくもないが、大正4年にそんな発想をした人間がいた驚きと同時に、この街に吹いていたモダンな風を感じる思いがする。
中学生の筆者にはこの交差点がとてもエキゾチックな場所に思えた。
そこには古い建物や神社や市場や船着場があって、自動車やバイクや自転車や人が行き交う活気があって、貨物船や連絡船の汽笛の音があって、海からの潮の匂いがあって、それらがこの交差点を混在が醸し出すエキゾチックで不思議な雰囲気にしていた。

変わり果てたと思い記憶の中に封印していた場所だったが、来て良かったと思った。
交差点を囲むように4つの古い建物が残り、そこに新しい活気が生まれていたことが何より嬉しかった...。

by finches | 2012-02-23 04:36 | 空間


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