899■■ 蕗の露
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火曜の朝、歯痛の初診を待っている時から歯痛とは異なる変調の兆しが体にはあった。
夕方、どうにも辛く体温を計ってみると、38度を優に超えていた。
そして、その晩から平熱に戻るまで三日間床に臥した。
四日目の昨日、熱が下がり起きはしたものの体はまだ辛く、歯痛がそれに加わった。

少し体を動かそうと、昼下がり家人を散歩に誘った。
その変貌を見たくなくて行くことがなくなっていた海へと足が向いた。
綺麗だった砂浜は草に覆われ、大勢が潮干狩りを楽しんだ沖まで続く干潟は消え、丸~く見えた水平線は堤防に隠れ、賑わっていた海水浴場は消波ブロックで海と遮断され、無数にいた干潟の生き物は数えるほどにその数を減らし精彩を失っていた。

それらの現実と記憶の中にある風景とを反芻させながらゆっくりと歩いた。
夏にはこの海岸のごみ集めに参加するつもりでいるが、人との関係を断たれた海岸の清掃の意味について考えながら歩いた。
一両編成の電車がかつての防波堤の上を汽笛を鳴らしながら走り去った。

今朝、義理の祖母が亡くなったことを知った。
百二歳と七カ月の大往生、その穏やかな死に悲しみなどはない。
ただただ、ご苦労様でした、お疲れさまでした、という気持ちが静かに湧いてきた。

蕗の露が葉際に点々と連なっていた。
その露の一つひとつには、消えて行ったたくさんの思い出が映し出されているように思えた...。

by finches | 2012-06-02 07:10 | 時間


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