910■■ 古い製材機
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製材所では黙っていると製材した材木や加工した製品だけを見せてくれる。
話が弾むと創造力を掻き立てられるような大きな板材や原木、そして乾燥場なども見せてくれる。
だが、原木を縦にわく製材機までは余程興味を示さない限り案内はしてくれない。
それには危険だという理由もある。

ヒバだけを扱うこの製材所の機械は古いものだったが、人の力では到底扱うことのできない大木を軽々と転がし、まるで手品師が指先で幾つもの球を自在に扱うように、帯鋸を入れたい向きに合わせて大木の向きを自在に変えることができた。
木の目を読み違えると高速で回転する帯鋸がその部分を切り裂いた瞬間、ヒバの大木は急速に凄まじい力で帯鋸を締め付け、一瞬の内に高速回転している刃を圧し折り、その破片はどこに飛ぶやら分からないというから、一歩間違えば正に命に係わる作業だ。

古い製材機は何十年にも亘って故障を直し部品を交換し油を注して使い込まれたものだった。
その黒光りする機械の美しさ、使い込まれた操作卓の傷の一つひとつに、人間と機械との長く真剣な戦いの歴史の痕を感じた。
いつも感じることだが、大正や昭和初期の機械が現役で動いているのはいいものだ。
決まってそんな所には巧い職人もいる。

デジタルの機械は故障すれば基板をすっかり交換しなければならない、人の手が入ることを拒絶するブラックボックスだ。
だが、アナログの機械は直しながら使い続けることができる。
ヒバの香りに包まれて元気に働く古い機械たちは輝いていた。
ここを訪ねて良かった...。

by finches | 2012-06-22 06:02 | 持続


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