932■■ 戦争遺産のある島
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次の日に東京での仕事に戻る家人をある島へ連れて行った。
そこは戦争遺産として特攻基地跡が残る島で、そこを訪れたのは、二つの産業遺産を名も所も明かさずにどう書き進めようかあぐねていて、突然行ってみようと思い立ってのことだった。

海原が見える駅まで歩き電車に乗った。
電車は途中一度乗り継いだ。
島へのフェリーは途中二つの港に寄港し、人と荷物を下ろしながら最後の港へ入った。

30年という歳月は記憶と現実とを随分と違うものに変えていた。
だが、それは島までの記憶の中の景色や港の風景であって、その特攻基地跡は30年前と同じように真っ青な空と、ジリジリと焼け付くような真夏の太陽と、どこまでも続く光り輝く大海原を背景に、暑い昼下がりの逆光の中に濃い静寂の影を作っていた。

記念館での家人は予想と想像を超えた場所に突然連れて来られたことに当惑しながらも、熱心に真剣に資料を目で追っていた。
自ら鐘楼の鐘を打ったのも、この夏一番の、否、これまでの人生で一番の衝撃的な過去との遭遇だったからだろう。

心に深く焼き付いた場所を再び訪れることには意味があると思った。
再来にして深い感動を喚起されるのだから、初めてそれらを目にする衝動と感動は如何許りであったろうと思う。
重かったが、決して風化させてはならないこれも歴史遺産だと、お互いが心に感じたことは確かだろう...。

by finches | 2012-08-24 06:10 | 遺産


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