934■■ 懐かしの海―九月
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五月蠅かった蝉の声も何時しか消え、朝夕虫の声が聞こえるようになった。
日中はまだ暑いが流石にあのうだるような熱波だけは去った。
空には夏の雲に混じり秋の雲も見られるようになった。

暑い最中にエアコンが壊れ修理に出した愛車は、2週間が経つのにまだ戻って来ない。
そんな日曜日、代車として借りているバンで海を見下ろす高台にある温泉に出掛けた。
昼食は以前から無性に気になっていた雑炊屋に立ち寄り済ませていた。
温泉のある宿はまだ昼食の予約客を席へと忙しく案内している最中だった。

その宿は中学一年の筆者が臨海学校に来た場所で、眼下に広がる大海原も沖に浮かぶ無人島も、緩くカーブを描く砂浜もその両端にある岬も昔のままの姿でそこにあった。
宿への長く急な坂を車で登りながら、この坂を確か午前午後の二回、上り下りしたことを懐かしく思い返した。
それは小学校が異なる2クラス70人の新入生の親睦を兼ねた入学後初めての夏の合宿でもあった。

泳ぎの得意でなかった筆者は海の塩水に助けられたことをよく覚えている。
泳ぎながら見た沖の無人島も、水平線から立ち昇る真っ白な入道雲の記憶も、長い時を経て未だ鮮明に残っている。

海と雲を何枚も写真に収めた。
輪郭濃くもくもくと聳え立つ入道雲も、もう直ぐ弱々しい姿へと変わる。
そして、空じゅうが秋の雲に変わる日がやがて来る...。

by finches | 2012-09-03 05:50 | 時間


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