948■■ 温泉と彼岸花-その三
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毎日の温泉通いを人は羨ましいと言うが、医者から治ることはないと言われた皮膚疾患の温泉治療をその湯に託している身としては、毎日のそれは他人の羨望からは程遠い忍耐に他ならない。
車で20分以内で行ける二つの温泉がその皮膚疾患を和らげることに偶然気付き、以来筆者の温泉通いは続いている。

その二つは元々は共に古くからある湯治場だが、そのうちの一方が秀逸な掛け流しの湯で、完治こそしないもののその効果には絶大なものがある。
ただ難を上げるならば、余り綺麗ではないことと、休みが決まっていないことだ。

最近その湯の常連から休みだった時に訪れるという温泉の名を聞いた。
そして、このところ日曜日になるのを今や遅しと待ってその温泉に出かけている。
正に灯台下暗し、その温泉の湯があの秀逸な湯に勝るとも劣らない掛け流しだったのだから堪らない。

その温泉には読みたい本を持って行くのが似合うと思い立ち、三回目にそれを実践してみた。
湯客が空いたら湯に浸かり、上がったら畳に胡坐をかいて本を読む。
窓からは桜紅葉、縁側からは峠の下を流れる川からの川風が心地よく入ってくる。
そして、湯上がりに食べた親子丼の素朴な味は何よりの馳走に思えた。

三回目の帰り道も同じ場所に車を止めた。
彼岸花は終わりを迎え、幾つかの田んぼを残しほとんどは稲刈りを終えていた。
これから晩秋を迎えそして冬を迎え、この景色はどんな風に変わっていくのだろう...。





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by finches | 2012-10-10 09:23 | 無題


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