952■■ 聖橋・版画
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写真は「昭和大東京百図絵」(昭和7(1932)年)に収められている、小泉癸巳男(Koizumi Kishio)の「聖橋」だ。
関東大震災の復興事業で聖橋が架けられたのは昭和3年、聖橋を通して後方に昭和7年完成の総武本線松住町架道橋が描かれていることから、小泉癸巳男はこの松住町架道橋をどうしても聖橋の背景に借景として使いたかったことが窺える。

そこには聖橋が鉄筋コンクリート造の開腹式アーチ橋であるのに対し、鋼鉄製のブレースドリブタイドアーチ橋を対比させた構図の中に、生まれ変わった帝都を正確に後世に伝え残す貴重な歴史資料としての側面が隠されている。
また、この松住町架道橋は関東大震災後に総武本線の両国橋(現両国駅)・御茶ノ水間の延伸工事で生まれた橋だということからも、帝都東京が新しい時代に力強く踏み出したその一歩を象徴する構図でもある。

拙稿ではこれまで5稿の中で聖橋に触れているが、肝心の聖橋をテーマに書くことはなかった。
手持ちの写真も随分とあるにはあるが、この橋が建築家・山田守の設計として余りにも有名である以上に、特段説明を加えてみたいという気持の誘発には至らなかったからだ。

だから、今朝も聖橋を通して見えてくる時代を書いただけで、肝心の聖橋については何も書いてはいない。
だがもしかしたら、この橋はもっと懐が深いのかも知れない。
その懐の奥にあるものが見えてきたら、その時はきっとこの橋について書けるような気がする...。

by finches | 2012-10-17 06:24 | 復興


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