どこでもいい、急に古い建物を見たくなった。 西に行こうが北に行こうが東に行こうが、南以外そこには歴史の面影を残す城下町がある。 だが、その日は以前に外からの家の構えに興味を抱いた、ある作家の生家を訪ねたいと思った。 到着するや玄関先の椅子に座って途中で買い求めたお萩と粟もちを、少し高台にあるその生家から山々と小川と田んぼを見下ろしながらいただいた。 田植えの終わった田んぼは、百匹近い野生の猿に荒らされて去年は田植をしなかったという話を聞いた。 また去年の小川の蛍はすごかったそうで、まるでその上を歩けそうなくらいの乱舞が見られたという。 護岸工事がされる前の小川はさぞ美しかったろうと尋ねると、それはそれは美しかったそうで、そのかつての情景を聞きながら、筆者の記憶の中にある,ある小川の護岸工事前と後の姿と重ね合わせた。 一人になると座敷に座りそこからの景色を飽きることなく眺めた。 燕が入って来るからと言いながら開けてくれた障子は両側に引き分けられていたが、それが四本引きの障子であることに気付いた。 四本引きとは障子の溝が4本切ってあるもので、全開すると障子3枚分の開口が得られる。 その様をどうしても伝えたくて写真1枚という方針を今朝は曲げて、2枚の写真を掲載した。 引き分けた2/4の開口と、片側に引き寄せた3/4の開口の開放感の違いはこれ程ある。 冬、山に日が落ちる頃、夕日が二つの座敷の奥まで明るく照らすそうだ。 山に沈むその美しい夕日を、座敷の奥から思い描いた...。
by finches
| 2013-05-14 06:33
| 空間
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