1005■■ 古本屋
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高校時代、街には3軒の書店があった。
それらは子供や学生から大人までが利用する街では大きな書店で、いつも大勢の客で賑わっていた。
そして、これらとは別に雑誌を主に扱う店や、兎に角雑多な書籍で溢れている店や、古本や古書を扱う店など、それら小さな店と大きな書店とが程よい距離を保って共存していた。

その中でも一軒不思議な雰囲気の店があった。
その店はアーケードのある二つの商店街を繋ぐその中間辺りにあって、商店街の名前こそあるがアーケードのない、どこか裏寂れた雰囲気の漂う通りに面していた。

その店は通りを挟んで斜向かいに一対あった。
斜向かいに建つ二軒其々にどんな本が置いてあったかは憶えていないが、少なくとも片方には透明なビニールに包まれた怪しい本が並んでいた。

あれから長い年月が流れ、怪しい片方は昔の面影を残す錆びた看板をそのままに、店を閉じていた。
そして、一方は今尚現役の古本屋として、一人二人と少ないなりに人の出入りがあった。

初めて見るその空間はどこか懐かしく、まるで遠い昔にタイムスリップしたように感じられた。
蔵書を増やすために行き止まりになった通路を、行きつ戻りつしながら全てまわった。

そこはまるで図書館のようで、思わず店主に岩波文庫『大君の都』はないかを尋ねていた。
そして筆者は岩波の棚で見つけた『西田幾多郎歌集』を手に店を出た。

今、『大君の都』が手元にある。
その店で思わず尋ねなければ、手に入れることはなかったかも...。

by finches | 2014-03-01 11:29 | 無題


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