カテゴリ:嗜好( 83 )
968■■ 包丁納め

b0125465_6255380.jpg


凍えるように寒いか、冷たい雨が降るか、そんな日が繰り返される中、小春日和とはいかないまでも一瞬寒さが和らいだ一日の到来に正月用の寒ブリを下ろしたばかりの包丁を研いだ。
日陰は空気も水も冷たかったが、荒研ぎから仕上げまで4つの砥石を使って丁寧に研いだ。

自分の包丁を持ってかれこれ15年近くになる。
だから、包丁を自分で研ぎ始めたのもその頃からということになる。

その頃の包丁は今では使っていない。
今使っている柳刃は大阪で買い求めたもので、出刃は地元の野鍛冶が作った両刃という一風変わった代物だ。

砥石は既に8つ所有しているが、近いうちにもう1つ増えることになりそうだ。
研ぎについて記載のある本も何冊か所持しているが、その上にわざわざ図書館からその手の本を借りて読んだこともあった。

だが、これまで今一ちゃんと研げていると言えるのか自信がなかった。
片刃の包丁の砥石への当て方は分かっているが、今一つ砥石に当たる刃の微妙な角度が違うようで悶々としていた。

ところがこの度初めて研げたと実感する瞬間に出合った。
仕上がりはまだまだ未熟だが、全ての基本である研ぎの入口に立てたことは確かなようだ。

お陰でその日を包丁納めとした為に、折角の寒ブリのさくも下ろすことが出来ずにいる。
だが、大晦日の今日、納めを解いて一回だけ使ってみようか...。

by finches | 2012-12-31 06:38 | 嗜好
881■■ CAVIAR
b0125465_659978.jpg


バレンタインで貰った4つのチョコレートのうち、まだ2つが残っている。
一つはDEMELで、もう一つがこのCAVIARだ。
引き出しの中に入れてあるものだから普段は忘れていて、時々思い出しては食べている。

CAVIARのパッケージのデザインは、その名の通りキャビアだ。
黙って出すと本物のキャビアと思ってしまいそうな、そんな遊び心が楽しい。
勿論粒は大き目だが、キャビアに見立てた粒状のビターチョコレートが缶いっぱいに入っている。

二つの味を比べると、DEMELはミルクでCAVIARはビターだから、形による食感の違いも然ることながらその味は全く異なる。
因みに筆者の好みはビターよりミルクだ。

そう言えば以前にカカオ100%のチョコレートを買ったことがあるが、その極限のビターの味は決して美味いものではなかった。
だから残りのカカオ100%は、函館の港を一望できるベランダに花火の日にセットしたテーブルに並べた料理の一つの、チョコレートソースとして使ったような記憶がある。
確か、鴨とオレンジに合わせたソースだったような気がする。

DEMELミルクとCAVIARビターの味は全く異なるが、DEMELミルクには全粉乳が加わる以外、後の成分は全く同じだ。
因みにその後の成分とは、カカオマス、砂糖、カカオバター、乳化剤、香料の5つだ。

同じものを使っていながら味も食感も無限に創り出せる。
それはまるで食や暮らしや人生ようだ...。

by finches | 2012-04-29 05:27 | 嗜好
777■■ 市場の買物
b0125465_703421.jpg


昨朝は久し振りに市場に出掛けた。
勿論この時期、市場は人で溢れ活気に満ち満ちていた。

いつものようにザッと一回りして品定めを終えると、徐に買物を始めた。
最初に小海老を買った。
続いて、鰯、海老、そして赤貝を買った。
次に場所を替え、蛸とカワハギを買った。

蛸とカワハギはこの日市場に並んだ中で一番大きなものを選んだ。
家人は市場の周りに並んだ露店で、重く身の締まった白菜やその他の野菜をドッサリと、正月用の枝物を買った。

朝食を終えると、先ず四本の包丁を研ぎ、買って来た魚を下ろし始めた。
カワハギは三枚に下ろし、肝も丁寧に取り出した。
カワハギの粗は甘辛く煮詰めると美味い。

鰯は軽く鱗を取ると、丁寧に包んでチルドに仕舞った。
鰯は刺身もいいが、脂ののったこの時期は焼くのが美味い。

蛸は塩でヌメリを取ると、番茶を入れた熱湯で茹でた。
この茹でる時間が蛸の味と、様々な料理に姿を変える下地をつくるのだから気が抜けない。
この時間は蛸の大きさや活きの良さ、締まり具合などの身の感じで変わるから、一概に何分が良いとは言えない。
このあたりの曖昧さこそが大事で、そこいらの役に立たない数多の料理本との違いだ。

昨夜はそんな中から、カワハギは肝合え、赤貝はネギぬた、蛸は刺身で食べた。
面倒だった赤貝の下処理の苦労も、美味い一品に変わると忘れてしまう。

さて、そろそろ7時、今朝も市場に出掛ける。
今朝の目当ては鰤と鯛の大物と、赤海鼠といったところだろうか。
出発は7時15分、昨日と同じ真っ赤な朝日が今日も見られるだろうか...。

by finches | 2011-12-30 04:48 | 嗜好
732■■ 秋鯖の味
b0125465_8524080.jpg


まだ暗い窓の外からは激しい雨音が聞こえる。
確か今日と明日は祭りの筈だが、この雨では客足の心配も然ることながら準備もまた大変だろう。
昨夜、温泉帰りに前を走る車のナンバーが『なにわ』で、所帯道具一式を乗せて旅でもしているのかと思いながら積まれた箱の文字を目で追うと、それは『だんご』と読めた。
『だんご?』と思いながら他の荷物に目をやると、リアガラスに密着するように詰まれているものがガスボンベであることが分った。
それらから、全国津々浦々の祭りを追って移動する流しの露店の車だと分った。
おそらく今日は朝から準備をする予定だろうが、せめて雨が小降りになってくれれば助かるだろうにと思った。

さて、今朝は料理のことを書こうと思う。
料理と言ってもただ鯖のことを書くだけだが。

市場で買った四本の秋鯖は軽く天日に干した切り身も〆鯖も三日で平らげた。
切り身は二枚に下ろした骨付きの方の片身を、筆者たちには二つに切り分け、両親たちには三つに切り分けて干した。
軽く塩をして干してやると生とは違い水分が飛んでいる分扱いやすく、それぞれをラップして保存しておけば、必要に応じて焼けばいいし、食の細くなった両親は更にその一切れを二つに切って一回の食事にあてることもできる。

〆鯖を作る時は塩で水分を抜く時間と酢の中に入れておく時間でいつも悩む。
塩○○分、酢○○分とか、塩○○時間、酢○○時間とか能書きを言って然も知っているようなことを言う人も多いが、大体この手の話はその本人も実はよく分ってはいないもので、要は好きにやってみればいいのだ。
注意することを一つだけ挙げるとすれば、酢に長く漬けすぎないことくらいだろう。
季節やその日の天気や温度や湿度にもよるが、酢に漬ける時間は筆者の場合、長くても2時間までと考えている。

塩を落とすには酢を使うのがいいが、今回は氷水で素早く塩を洗い流し直ぐに水気を拭き取った。
水道のぬるい水で直接塩を洗い流すのはやってはいけない。
酢から上げた鯖から素早く酢を拭き取ることも美味い〆鯖を作るには欠かせない。
この単純なことを必要以上鯖に触れず素早く丁寧にやれば誰でも美味い〆鯖を作ることができる。

後は、冷蔵庫に寝かせておいた日数でその味は変化する。
その味の変化を毎日楽しむのもまた楽しいものだ。

函館の宝来町に美味い寿司屋があるが、そこでは、これはさっき〆たばかり、これは一日前、これは三日前と言って〆鯖を出してくれたり、更にそれに一手間かけ炙って出してくれたりする。
それ程複雑で奥が深い。
その店の主人などは塩と酢の時間なども隠さず教えてくれるが、その時間を守ったからといって同じ味になる訳では勿論ない。

店主からはプロとしての余裕が感じられる。
だが、筆者も負けじと自作の〆鯖を持参して味見を請うたこともある。
鯖一つにもそんな数々の思い出がある、それを懐かしく思い返した...。

by finches | 2011-11-05 04:16 | 嗜好
729■■ 鯖の泳ぐ海

b0125465_5421660.jpg


久し振りに市場に行こうと家を出た。
いつもより早く出たことで、少し回り道をして砂浜が続く海岸に寄り道をした。
そこからは市場のある港も見えた。

朝の海に二人で来たのは随分と前のことのように思えた。
早朝の砂はまだ夜露に湿っていたが、朝の爽やかな空気を全身に吸い込みながら砂浜を歩いた。
潮が引いた海は遠くにあった。

市場では最初に小海老を買った。
続いて鯖と浅蜊と秋刀魚と穴子を買い、最後にもう一度鯖を買った。
秋刀魚は3本、鯖は合わせて4本になった。

最初に買った鯖は青く、太ってはいたが長めに見え、次に買った鯖は金色がかっていて、同じように太ってはいたが若干短めに見えた。
目は共に澄んでいたが、金色がかった方がよりクリッとした良い目をしていた。

鯖はいつもだと三枚に下ろすところを二枚に下ろし、骨の付いた片身は切り分け、塩をして数時間天日に干して水分を抜いた。
骨のない方の片身は勿論〆鯖にした。
そして、金色がかった鯖を買い足して正解だったと思った。

よく切れる出刃で魚を下ろすと分るが、想像した通り身の締まりの違いを刃先で感じた。
酢で〆るとその微妙な違いは更に鮮明になって表れた。
そう、この時期両者とも脂はのっているが、切り口の色にその微妙な差は表れた。

昨日の昼は小海老を使ったかき揚げ丼を、夜は〆鯖と酢橘をギュッと搾って秋刀魚を堪能した。
今朝は軽く干した鯖の切り身と浅蜊の味噌汁が食卓に並ぶだろう。
そんな食卓の情景を思い浮かべながら、四季の変化がある国に生まれたことをつくづく幸せに思った。

市場には何本も鰆が並んでいた。
よし、次は鰆にしようと心の中で思った...。

by finches | 2011-11-02 03:06 | 嗜好
715■■ 柿を活ける
b0125465_7502446.jpg


今日は暖かい朝で、靴下も履かず半袖でも寒さは感じない。
今日はこれから雨の予報で、雨を降らせる暖かい低気圧がもうやって来ているのかもしれない。
だが、まだ空には月も見えるし東の雲間も明るい。

昨日は隣家で庭木の剪定が行われた。
目隠しのために植えられたカイズカイブキが鬱蒼としていて、最初はこの剪定が目的だったが、綺麗サッパリと剪定が終わり庭に光が射し明るくなると、次々に剪定の追加依頼が行われた。

カイズカイブキが終わるとこれまた伸び放題だったキンモクセイがサッパリとした姿に変わった。
東京のマンションの中庭にも一本のキンモクセイがあって、年に一度その甘い匂いを楽しんだものだが、隣地にあった研修所の建て替えで、センスのない造園計画によって敷地の境界に沿ってキンモクセイが列植されたものだから、可哀相に中庭の我らのキンモクセイはそのアイデンティティを失った、剪定を見ながらそんなことを思い出した。

更に剪定が進み隣家の希望で柿の木がバッサリ切られそうになり、筆者は思わず庭師の意見を聞いた方がいいと塀越しに声を掛け、結局柿の木全体のバランスを崩さないよう一本の大枝を切るだけで落ち着いた。
その枝を塀越しに譲り受け、水瓶に挿した。

下細りの水瓶はバランスが悪く、大枝を挿すと直ぐに転んだ。
仕方なく大枝を諦めて小枝に切り分け何とか転ばないようにバランスを見ながら挿した。
筆者にはこれよりもっと大きい瓶に大きな枝や野草を活けたい夢がある。
その第一歩を昨日は自分の作業の合間に楽しんだ。

今朝、朝食後に枝から落ちた三つの柿の一つを食べてみた。
その実はまだ小さく固めだったが、仄かな甘みが口の中にひろがった...。

by finches | 2011-10-14 06:14 | 嗜好
710■■ 拾われたスタンド
b0125465_6405595.jpg


拾ったスタンドだと、拾った人間が主語になる。
拾われたスタンドだと、スタンドが主語になれる。
落ちていたものを偶然に拾ったのではなく、意思をもって筆者に拾われて来たのだから、この場合スタンドを主語にしてやりたいと思った。

そのスタンドはゴミとして捨てられていた。
一見してベースとスイッチボタンの形状から古いスタンドに思え、一旦は通り過ぎたもののどうにも気になって引き返し、迷った挙句に筆者の身長に近いそのスタンドを取り上げた。

我家には自作のスタンドが既にあり、このスタンドは仕事場に置いた。
夜蛍光灯を消してこのスタンドを点けると、二つの小さな電球の灯りは窓ガラスに部屋全体をその色に染めて映し出し、横長に広がる街の夜景を借景にしてその日の疲れを優しく癒してくれる気がした。

今このスタンドの灯りは外から見て四方に開いた窓の何処からでも見える位置に置いてある。
庭側からは柿の枝越しに、道路を走る車からも見えるようにその位置は決めてある。
道路側の窓は筆者の仕事場のショーウィンドウ、看板は無くてもこの灯りに気付く人が訪ねてくれるような、そんな仕事をして行きたいと思っている。

この部屋にある唯一拾われて来たスタンド。
置く場所は変わっても、その優しい灯りには変わらず癒されている...。

by finches | 2011-10-09 05:13 | 嗜好
679■■ 鰹-七月
b0125465_6231741.jpg


昨日の朝、市場で活きのいい鰹を見つけた。
透かさず二本あったうちの大きい方を買い求めた。
我が家には鰹のたたきを作るための藁束が常備してあるくらいで、市場を覘くたびに鰹が上がっていないかと目を光らせている。

早速横に長い魚形の皿に大き目の蕗の葉を敷き、そこに神妙に鰹を置いて捌く前の儀式である写真を撮った。
朝食を素早く済ませると、手早く五枚に下ろしそれを更に削いで四本のさくに仕上げた。
一本は皮を剥いで刺身と冷汁用に、三本はたたき用にと分けてしまった。

粗(あら)や内臓もそのほとんどを甘辛く煮込んだ。
いつもの朝より遅くなったが、それでも9時には仕事をスタートできるのだから、たまには大きな魚を捌くのは体と心の両方の健康にいいと思う。

毎日が慌しくあっという間に過ぎるように感じる。
暑い夏は自分なりのサマータイムで臨んでいる。
朝は四時半スタート、夕方は六時半には仕事を終え、車を走らせ温泉に入りに出掛ける。
帰ると冷した赤ワインを飲みながらゆっくりと夕食を採り、十時過ぎには就寝する。

頭を使うこと、体を使うこと、嗜好に遊ぶこと、旬を感じること、自然の営みを観察すること、文を書くこと、本を読むこと、考えること、冷徹に社会を見ること、それらを同時に行えることが一月前とは違うところだろうか...。

by finches | 2011-07-14 06:23 | 嗜好
667■■ バーの粋
b0125465_8595967.jpg


場所を書けなくて口惜しいが、二輌編成の電車が走るこの街が好きだ。
駅前の商店街は規模こそ小さいが活気があって、踏切を渡ると風呂屋もあるし、駅名になった神社もある。
電車の音はすっかり街の音になっていて、耳に優しく心地良ささえ感じる。

その踏切から線路沿いに歩くと一軒の小さなバーがある。
名をバッカスと言い、創業51年になるまるで時間が止まったような店だ。
扉を開けると水槽の鮒が迎えてくれる。

高齢のバーテンダー。
座り心地の良くないカウンターのハイチェアー。
マティーニのオリーブが挿されているのは楊枝。
コルクのコースター。

どれも筆者の嗜好からは外れるのだが、そのバランスの悪さとちぐはぐさが何とも心地いい。
決して美味いとは言えないカクテルもこの人がつくるから許せるし微笑ましくも思える。
昨夜三人でいつもの席に座った。

年を取られたなあ、と思った。
手際の衰えは流石に隠せないが、矍鑠とし凛とした身なりと真横にキリッと締めた蝶ネクタイが決っていた。
そんな夜のひと時、磨き込まれたボトルたちもいつもよりキラキラと輝いて見えた...。

by finches | 2011-06-15 09:04 | 嗜好
666■■ 家具の妙
b0125465_8303128.jpg


『移住計画 from 東京』の実行日へ向けてカウントダウンが始まった。
パソコンを置いた四角の机、食卓の丸テーブル、2台のイージーチェアー、これら以外はほぼ片付いた。
先陣をきって今朝ピアノが部屋を出て行く。

四角の机はビーチとブラックグレーの天然リノリウム貼りで、使い込んだ趣が出てきた。
丸テーブルは同じくビーチとグレイグリーンの天然リノリウム貼りで、今では廃版となっているこの色が気に入っている。
イージーチェアーはオークとブラウンレッドのレザーで、この椅子には何時間座っていても疲れることがない。

空になった書棚とチェストのコントラストが面白いと思い写真に撮ってみた。
ビーチの書棚と赤いチェストはそのシンプルさが気に入っている。
赤いチェストはIKEA製で、今は新宿に移っているACTUSがまだ渋谷の公園通りの上にあった時に買ったもので、小さな傷がそこらじゅうについていて随分と年季が入っている最も古い家具だ。

IKEAのチェストを見ていて、これが日本製だったら数年で具合が悪くなるか、ここまで使っていても最後はゴミになっていたと思う。
シンプルとチープは違う。
形だけ見掛けだけの偽物ばかりのシンプルが氾濫しそれがまかり通る世の中で、本物のシンプルにはもの作りへの真摯な思想が存在する...。

by finches | 2011-06-14 06:10 | 嗜好