カテゴリ:無題( 215 )
977■■ 川がくれた柳
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その昔東大寺建立の木材を切り出した杣の森、その深い森へと続く一本の流れがある。
筆者はその悠然とした流れも好きだが、その更に上流から分水嶺を越えた山向こうの清流へと続く辺りが特に好きだ。
今や深山幽谷まで砂防ダムや護岸工事が施されていない場所を探す方が難しいくらいだが、ここにはまだ美しい渓流の名残を見ることができる。

朝刊にその川の伐採木の無料提供の記事を見付け、早速申し込んだ。
柳の生木はずっしりと重く、運搬できそうなものを20本ほど選んで持ち帰った。
そして、20本の生木は太さの異なる2つのグループに分けて積み上げた。

昔から薪割りに憧れていた。
丸太の上に薪割り用の丸太を置いて斧を一気に振り下ろす、あれをやってみたかった。
その思い入れはさて置き、まだ先は長そうだ。
生木の乾燥が少し進むまで、当面は玄関前のオブジェということにしておこう...。

by finches | 2013-03-17 11:21 | 無題
976■■ 一年通したこと


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たとえそれがどんなことであっても、それが取るに足らない些細なことであっても、それを一年間続けたことによる満足感はあるものだ。
そして、よくも続いたものだという感慨の一方で、もう一年が経ったのかという時間の速さと短さをつくづくと思う。

それは正に取るに足らない些細なことで、風呂で石鹸を使うのを止めて一年が経ったというに過ぎない。
突然思い立って最初はシャンプーから始め、約二週間の時間差で石鹸も使うのを止めた。
衣服は汚れていないか、異臭はしていないか、思い付くすべてに気を払ったが、春を迎え夏が来て秋が過ぎ冬が終わり再び春の足音が聞こえる頃となって、自らの体で実践した小さな試みの結果に静かな歓びが湧いてくる。

地方での暮らしを選択したことをきっかけに、一生付き合わざるを得ないと諦めていた2つの薬も止めた。
何をやるにしても何を始めるにしても、先ずは体づくりが基本。
その為の自己免疫力を上げる取り組みも2年目を迎える...。

by finches | 2013-03-05 09:29 | 無題
975■■ 冬の小鳥
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快晴の日曜、久し振りに山にでも入ってみようと思っていると、みるみる日が陰り冷たい風の吹く一日に変わった。
昼食に出るのも億劫で、時折チョコレートをつまみながら昼を跨いでの読書日となった。
時々窓からの景色を眺めながら何枚かの写真を撮っているうちに、突然この情景をブログを書こうと思い立った。

柿の木にもう実はない。
その柿の木の傍に昨日から蜜柑を二つ割りにして置いている。
それはメジロの為だが、そのメジロを筆者の宿敵・ヒヨドリが追い散らし、メジロの為の蜜柑を貪り食う。
窓の内には手裏剣ならぬ細く切った杉板を、窓の外には小粒の飛礫を一列に並べ、ヒヨドリの鳴き声がする度に撃退していたが、狡猾なヒヨドリとの戦いは相手が何枚も上手であることを渋々認め、その不毛な戦いに終止符を打った。

一夜が明け冷静さを取り戻した筆者はヒヨドリの撃退を諦め、ヒヨドリが蜜柑を食べられない方策を考えることに頭を切り替えた。
方法を変えながらメジロとヒヨドリの食べ方を注意深く観察し、とうとうメジロには食べられるがヒヨドリには食べられない蜜柑の吊るし方を発見した。

冬の庭にはハクセキレイが走りまわり、胸を叩くような音の主はジョウビタキ、柿の枝で羽繕いをしているのは餌を食べ終わった雉鳩の番、二つぶら下げた蜜柑をメジロが楽しそうに食べ、蜜柑を食べることの出来ないヒヨドリは時々やって来てはメジロを追い払いけたたましい鳴き声を上げている。

一本の柿の木で冬の小鳥たちが繰り広げる世界、そこからは微塵の濁りもない真剣な生の営みが見えてくる...。

by finches | 2013-02-17 15:47 | 無題
973■■ 休日の陽だまり
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穏やかな休日の朝、冬の日射しは暖かい陽だまりを床に落とし、遠くに見える海の波はキラキラと輝き、漁に励む幾艘もの船が見える。
南の窓はまるで絵画の額縁のように、日々変化する季節を切り取って見せてくれる。

既に実のなくなった柿の木に一羽のメジロがやって来て、実のないことを確かめるや、軽やかに飛び去って行った。
その姿を目で追いながら瓦屋根の上の雉鳩の番いに気付き、いつものように餌を置いてやるといそいそとやって来て啄ばみ始める。
その様を小椅子に座って眺め、二羽が飛び去るのを待ってゆっくりと二階に戻る。

今日はこれを書き終えたら温泉に直行し、午後はバロックの音楽会を楽しみにしている。
こんな休日を過ごせることに、心底から感謝...、重ねて感謝...。

by finches | 2013-02-11 10:59 | 無題
970■■ メジロの死
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何かが何処かにぶつかったような異常な音に、その所在にあれこれと頭を巡らせた。
下に停めてある車に何かが当たったのではという突然の予感に窓を開けて見下ろすと、下階の庇の先に一羽のメジロがうずくまっていた。
良く見ると頭が朦朧としているようで、音の正体はそのメジロが窓ガラスにぶつかった音だと察した。

体の動きは止まり目だけを時折しばたたく微かな動きに、これは脳震盪を起こしているに違いないと、今にも庇の先から落ちそうなメジロの救出に取りかかった。
元気になるまで安静にしておいてやるために、大きめの紙箱に新聞紙を何重にも敷き救出に向かった。

その間数分、脚立を掛けて救うまでもなく、メジロは庇から落ちて動かなくなっていた。
「まだ助かる」、暖かいストーブの前でまだ温かいメジロを手の平に載せてゆっくり優しく心臓マッサージを始めた。
「きっと蘇生する」、その一念で頭をなでてやりながら柔らかい胸毛をゆっくりと押し続けた。
マッサージを止めた後も、ただ気絶しているだけかもしれないという微かな期待から、暖かい紙箱の中に寝かせてやった。

メジロが蘇生することはなかった。
メジロは数日前まで一心に実を食べていた柿の木の下に埋めてやった。
米粒と蜜柑一房を一緒に入れてやった。
きっとこのメジロは柿の木の守り神になってくれるだろう...。

by finches | 2013-01-17 08:03 | 無題
967■■ 雉鳩
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冬木立の中にあって色のある実をつけた柿と柑橘の木々にほっと心が和む。
枝に残した沢山の柿の実は小鳥たちのもので、食べ頃に熟したものからなくなっていく。
蜜柑も酢橘も八朔も酢橙も黄色く色付き、これらは勿論食べてもいいがそのままにして目で楽しむのもいい。

水鉢のめだかたちも小春日和の暖かい日以外は姿を見せなくなった。
そんな冬の庭に毎日欠かさずやって来るのが雉鳩だ。
気が付くと葉を落とした柿の枝にとまっていたり、ガサガサと音のする方に目をやると柿落葉の上を歩いていたり、踏み石の上をこちらに向かって歩いていたり、そんな時は思わず「おはよう」と声をかける。

この日も一番手前の踏み石まで歩いて来た雉鳩に気付き、芥子の実を石の上に置いてやると、一旦は二つ先の踏み石まで後退するが、直ぐにやって来て美味そうに食べ始める。
時には日に何度もやって来ることもあるが、その都度餌を置いてやる。
雉鳩も筆者に興味があるようで、ただ枝にとまってこちらを見ている時もある。

そんなゆっくりとした時間が冬木立の間を柿落葉の上を流れていく。
そんな純な自然の営みの中で心は澄み感性は研かれる。
そして、復古していく自分がいる...。

by finches | 2012-12-18 05:57 | 無題
966■■ 初氷-十二月
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毎朝寒い。
寒くて毎朝朝食時間まで布団から出ることができなかった。
起きなければと思いながら浅い眠りを何度も繰り返す、そんな朝を送っていた。

寒いという理由でブログも書かなかった、否、本当に寒くて書けなかった。
だが、今朝は徐に着替え、手袋をして庭を横切り、二階に上がった。
室温4度、アラジンが温風を吹き出すまでの余熱時間が長くながく感じられた。

皮張りの椅子も冷え切っていた。
仕舞ってあった膝掛けを取り出し、一枚は皮張りの背と座を覆うように掛け、もう一枚は膝に掛けた。
準備は整った、が、指先は凍るように冷たかった。

一昨日メダカの水鉢に張った初氷を撮っておいたのを思い出した。
今朝はその写真を使おう。
キーを打つ指先はまだ氷のように冷たい...。

by finches | 2012-12-12 06:35 | 無題
964■■ 気を活ける
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ワラ、ススキ、クマザサ、ベニバナ、フヨウ、ナナカマド、これらが大小の甕や皿や花瓶に活けてある。
どれも枯れているのだから活けてあるというのは正しくないかもしれないが、気に在って気に於いて、それらは未だに活き続けている。
それは、あくまでそれをそう思う側の主観的な感性の問題であり、そこにはそう思う側が思っている程の客観性も不変性もないのかもしれない。
だから、そう思わないそう感じない側からすると、それらに価値を見出したり愛でたり歓びを感じたり癒されたり、という繊細な感情を抱くこともないのかもしれない。

それらとは別に、隣家からもらった実付きの蜜柑の枝は大甕にそれこそ活けてあるし、友人宅に実った蜜柑は一見雑に見えるが台の上に活けてあるのだし、庭の柿の木からもいだ実もこれも一見雑に見えるが机の上に蜜柑と呼び合うように活けてあるものだ。
庭石の上にも実付きの幾枝かを配置し、もぐ時に竹竿から落ちた実も適度に土の上に残し、庭に設えてあるガラスのテーブルには沢山の実が置いてあって、熟れてきたらそこから一つ二つと食すことを楽しんでもいた。
前稿の小さな旅に持参した蜜柑は大甕に活けた蜜柑の枝からのものだし、柿はガラスのテールからのものだ。

昨夕出先から戻り灯りを点けると、先ず机の上の柿に何となくだが異変を感じた、何かが違う、と。
暫くして、ガラスのテーブルの上の柿が全て消えていることに気付いた。
写真は昨日の昼間二階の窓から柿の木とガラスのテールの柿の実を撮ったもので、いいものだと感じ入った正にその景色だ。
それらが、何の前触れもなく、ましてや何の断りも無くなくなっていることに、厭な強い衝撃を覚えた。

柿がなくなった理由は直ぐに分かった。
もらいに来られた隣人に差し上げた、それはそれでいい、それに文句はない。
だが、活きて気を創っていた柿たちを、ただの物として処分した母の心根と配慮の無さに強い憤りを覚えた。

机の上には小さい実だけが残され、ガラスのテーブルからは根こそぎ柿は消え失せ、そのテーブルは拭かれることもなく、雨に打たれた柿の跡だけが残されていた。
実を採った酢橘の木には30以上の実を残してあり、根こそぎその実を取ることはしない。
そんな心遣いが少しでも感じられたら、あんな厭な気持にはならかったと思う。

両親との同居には多くの我慢を強いられる。
だが、両親もきっと多くのことを我慢をしているのだろうと思いながら、重苦しく一日が終った...。

by finches | 2012-11-27 06:38 | 無題
960■■ メダカも寒かろう

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ここに来て朝晩めっきり寒くなりストーブを点けることも多くなった。
柿も随分と葉を落とし、梢の実もどれから取って食べて頂いてもいいという頃合いになってきた。
日曜には今年の初収穫の手始めとして、150個ばかりの実をもぎ隣家四軒に配った。
もぐ時に傷ついた柿は庭に設えたガラスのテーブルに並べ、ナイフと水を入れたバケツを用意した。
そう、食べたくなったらテーブルの柿をバケツの水で洗い、ナイフで剥いて剥いた皮はテーブルの横に掘った穴に投げ込み、ナイフで実を切り分けながら立ったまま食べる。
この野趣溢れる食べ方が実に美味い。

柿を食べながらふと足元の水鉢のメダカに目をやると、何だかとても寒そうに恨めしそうに見えた。
これまで越冬の準備などしてやることはなかったが、柿の木の下に風除けもなく置かれた水鉢の辺りは海からの風の通り道で気温が下がるようだ。
だから、今年は用意周到、防寒対策の為の藁縄を準備して寒さの訪れを待っていた訳だ。

インプラントの手術をして抜糸を待つ身の一人寂しさからか、メダカたちの水鉢に藁縄を撒いてやろうと突然作業を始めたのが昨日のことだ。
心なしか、今朝のメダカたちはみんな嬉しそうに泳いでいるように見えた。
そして、もっと寒くなれば風除けも作ってやろう、と思った...。

by finches | 2012-11-16 08:12 | 無題
957■■ 突然の訃報

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喪中につき新年の挨拶を遠慮する旨の葉書は毎年何枚か届く。
ただ、そのほとんどがまだ一度も会ったことのない親族の逝去に伴うもので、悲しいというより、「ああ、お亡くなりになられたのか」という静かな感慨を胸に抱きご冥福を祈って終わる。

だが、昨日穂高に住む友人から届いた「妻永眠」の訃報は、重く悲しく冷たい知らせだった。
もしあの世への順番があるとすればそれは長く生きた順の筈で、人生の途中で突然あの世に旅立たれては残されたものが堪らない。

東京を離れる前に一度訪ねておきたいと思いながら叶わず、今年に入ってからも何度も訪ねてみようかと思う気持ちが頭を掠めていた。
そう思わせたのは、すでに半年前に逝去されていた「彼女」からのメッセージだったような気がする。

初めての結婚式も彼らだった。
雪が降っていたのを鮮明に覚えている。
前日入りして友人とその友人たちと祝いの酒を夜遅くまで飲んだ。

京浜急行の弘明寺(ぐみょうじ)にあった新居にも何度か行った。
友人は父親の急逝で東京から故郷に戻り会社を継いだ、その時の苦労も頑張りも見てきた。
結婚前に家人を連れて訪ねたこともあった。
その時は友人、その母、筆者、家人、その四人で燕岳(つばくろだけ)に登り、「彼女」は呆れたようにそれを見送った。

数え上げれば切りがない山程の思い出がある。
もっと話をしておけば良かった、話を聞いておきたかった。
一夜明けその突然の訃報はまだ重い...。

by finches | 2012-11-06 08:24 | 無題